きょうはありがとうございます。
突然、舞わせていただいきました鶴の声という曲、お祝い曲でございまして、
雨の日に出会った二人はしっとりと、「足拭く宿にしめやかに」と、
足を拭く宿と申しますのは、そんなに立派ではない素朴なお宿で、
立ち寄ってお茶飲むだけなら足は拭きません。
うえに上がってお泊りしたという事で、しめやかに語り明かしたと言うことで、
何をか言わんやで、ちょっと想像していただきまして…。
で、「鶴の一声」それはめったに言わないひと言、「かわいい」と言われたので、
その言葉がホントかウソか分からないけど、一生に一度、鶴の一声、
幾千代までも一緒にいましょうと言ったと。
そして最後は、共に白髪を取るまで、昔は人生50年でございますから、
白髪を取るまで一緒に暮らしたという、お祝い曲でございます。
ちなみに、谷崎(潤一郎)さんは地歌を習われてはじめにこの歌を習われて、
非常に覚えが悪うございまして、「軒の雨、立ち寄る影は難波津や」
という軒の雨ばかりやってらっしゃるので、お友達に、
「雨上がっちゃうよ」と、からかわれたそうでございます。
お習いになりましたのは菊原琴治(ことじ)先生で、
このあいだ102歳まで元気でいらっしゃってギネスブックに載った
菊原初子(はつこ)先生という地歌のお師匠さんのお父さまで、
初子先生は春琴抄のモデルになった方で、
そういうふうにちょっと文学的であったり色々伝説もあります
地歌や地歌舞なんですけども、なかなかご存知でない方も多ございます。
この場でも多分地歌舞なんて、ありまご存じないかと思いますので、
すこし着物しぐさのお話しに入っていく前に、舞のお話しは慣れておりますので、
そちらのほうからに入らせていただきたいと存じます。