投稿日: Jun 13, 2012 6:23:0 AM
長い長いネーミングの地歌舞公演が終了しました。
「風の恵みは宮島から 海を眺めたのしむ地歌舞『古道成寺』」
と銘打った、なが~いタイトルの公演でした。
伝統芸能の地歌舞にこだわり、
平安の海に浮かぶ宮島を望む素晴らしい会場にこだわり、
そして、6月の季節にこだわった、公演のネーミングでした。
昼の部、夕の部の来場者と、スタッフ出演者を延べ人数にすると、
あわせて総勢150人の、広島での地歌舞公演の模様を報告します。
(行者山 太光寺) (本堂で会場設営)
会場設営が終わると、午前10時30分からリハーサル。
楽器の位置をどこにするか確かめながらがら、本番どうりの進行。
このリハーサルで、本番では思いもよらぬ素晴らしい演出が生まれ、
観客を深い、深か~い、「雪」の世界へと誘い、
感嘆の声があがることになるのですが、それは、のちほど。
( 古道成寺 ) (古澤侑峯、清姫を舞う)
紀州和歌山に伝わる安珍清姫伝説を、古澤侑峯が舞いました。
熊野詣での僧に思いを寄せる13歳の少女清姫に始まり、
執念の炎を燃やして日高川を蛇になって渡る清姫、
そして、道成寺へ逃げ込んだ安珍のかくれる鐘の龍頭をくわえ、
七巻半まきつけて、口から炎を吹きつける蛇身の清姫まで、
起伏に富んだ物語を、情感あふれる舞で魅せました。
3、尺八と琴の演奏、「鹿の遠音」「沙羅の花」
つづいて、尺八の演奏で「鹿の遠音」、そして箏が入って「沙羅の花」。
尺八は芦垣皋盟、箏に芦垣育子でした。
(尺八、芦垣皋盟「鹿の遠音」) (箏、芦垣育子「沙羅の花」)
琴古流本曲「鹿の遠音」は、虚無僧が吹いていた曲。
「沙羅の花」は、夏椿とも呼ばれる初夏の花を
かわいらしいメロディーに託した、美しい現代曲でした。
夕の部では、流れる涙を拭こうともせず、聞く老婦人の姿が印象的でした。
「心が洗われるような気がした」と、感動を話してくれました。
演奏者による曲目と楽器の解説も入り、会場は和みました。
4、波紋音(はもん)の演奏、「異国のメロディ」「泉」
演奏は永田砂知子で、どちらもオリジナル曲。
まずは、鉄の創作打楽器波紋音を、お見せします。
(創作打楽器、波紋音) (波紋音、永田砂知子「異国のメロディー」)
水琴窟に発想を得て創った波紋音は、神秘的な音がします。
打面にスリットが入っていて、叩く場所により音程が変わるのです。
宗教的や精神的な音に感じたと、感想をもった観客がありました。
その観客は、「泉」を聴いていて、渾渾と湧く
富士山の柿田川湧水をイメージしたそうです。
5、地歌舞「雪」
最後は、「雪」です。
地歌舞は古澤侑峯。三絃を芦垣育子、尺八に芦垣皋盟。
(地歌舞「雪」 三絃、芦垣育子) (舞、古澤侑峯)
音もなく降り積もる雪の中を、ひとりの女人が歩いています。
失った恋の想いをたずさえて、行くその道は、尼寺へと続いています。
大切な人への面影をたどりつつも、ひと足ごとに置き去りにして、
ふと振り返った山のすそに、茜いろの雲が一筋かかっていました。
「花も雪も 払えば清き 袂かな・・・」
と、しっとりとした地歌で始まります。
そこへ、三絃の音がテーン、テン、トーン、とゆっくりと絡んで入ります。
観客は古澤侑峯の舞姿に、
尼寺への道をひとり歩く女人をみて、見入っています。
「・・・、心も遠き 夜半の鐘」。
テン、テンと、三絃が鳴ったところで、尺八が遠音に聞こえてきます。
それまで、舞台に惹きつけられていた観客は、舞台袖の遠くから、
突然入りこんできた尺八の音に、いっしゅん驚き、
三絃との合奏がかもしだす妙なる情感に、さらに、舞いへと惹きこまれました。
地歌舞「雪」の写真に、舞台に尺八の姿が写っていないのは、
この演出のせいでした。舞台から尺八が姿を消し、
舞台入り口の戸板を七分に閉めた、袖の中に尺八が座り、
「雪」がなかばまで進んだところで、そろーりと絡んで入ったのでした。
これこそがリハーサルで生み出された、
地歌舞「雪」の世界への、深い、深~い誘いでした。
「・・・捨てた浮世の 山かづら」
との後歌で、「雪」が終わると、万雷の拍手に。
しかし舞台は、まだ終わっていません。
舞い終えて中央にいる古澤侑峯が、袖へと退場し始めると、
客席は舞台を去る古澤に釘付けとなり、しばらく息をのんだままでした。
やがて、姿が消えると、再び万雷の拍手に見舞われました。
6、昼の部が終わり、夕の部、そしておまけの写真集を。
夕の部は、午後4時30分の開演。
観客は昼の部の半分ほどで、演目演奏の並び順は昼の部と同じでした。
写真で、舞台と公演の一部をご覧ください。
(古澤の舞を見て、波紋音演奏する永田) (「花も雪も 払えば・・・」と、芦垣。 古澤、ふと振り返り茜色の雲を見る。)
(MCはこの人でした。) (楽器の搬入搬出は、二人の受け持ちで。) (こんな、シルエットに・・)
(古道成寺 蛇身と化す清姫) (雪 ほんに昔の事よ、・・・) (雪 落つる涙のつららより・・・)
(波紋音の説明に、終演後も人垣ができ絶えません。)
主催者がこだわった公演名への思いは、ご来場いただいたことで
みなさまにも賛同していただけたものと、熱く受け止めています。
長い長いネーミングの地歌舞公演に、
昼夕の部に、大勢の人に足を運んでいただき、
ほんとうに、ありがとうございました。