投稿日: Sep 09, 2011 12:10:16 PM
たいへん遅くなってしまいました。
8月のお盆あけに行ってみた文楽の報告を、
今ごろすることに、大いに後ろめたさを感じています。
もう、9月の半ばを迎えるというのに、ですよ。
8月21日(日)、
夏期限定で伝統の人形浄瑠璃が観られる文楽鑑賞ツアーに、
広島から、愛媛県は内子町の内子座に雨の中を行ってまいりました。
Den10の会から総勢9名、ツアーの一行は25名でした。
今回鑑賞ツアーのレポートは、実は、こちらのブログに先行掲載していまして、
当日の模様は、こちらからお読みいただきたく、ご覧ください。
そこで、この内子座文楽の報告は、別の観点からお送りします。
道中の車内で参加者全員に配布されたのが、床本集でした。
床本といいますのは、芝居の台本、テレビ番組でいうシナリオで、
つまりは、演劇や映画、イベントでの、進行台本のようなものです。
で、床本の中味はなにが有るのかというと、
まず、表紙裏に、公演日の内子座文楽で行われる人形浄瑠璃の
午前の部と、午後の部のタイムスケジュールが掲載されている。
たとえば、今回参加した鑑賞ツアーが観た午後の部のスケジュールは、
13時30分 開場
14時00分 お話し「見所・聴き所」
14時10分 生写朝顔話(しょううつし あさがおばなし)
笑い薬の段(わらいぐすりのだん)
宿屋の段(やどやのだん)
大井川の段(おおいがわのだん)
16時17分 休憩
16時32分 釣女(つりおんな)
17時05分 終演
となっている。
そして、本文がはじまり配役表、お話(あらすじ)と続いている。
配役表には、義太夫(物語の筋やせりふ)をうなる太夫と、
音楽の三味線奏者、そして人形遣いや人形の役割が、全員記されている。
以下は、その一部の人間国宝クラスだけを、抜き出して書いた。
*生写朝顔話 (しょううつしあさがおばなし)
笑い薬の段 太夫 豊竹嶋大夫・豊竹咲大夫
宿屋の段 人形 朝顔実は娘深雪 吉田文雀(人間国宝)
大井川の段
*釣女 三味線 鶴澤清治(人間国宝)
そして、二ページ目から、いよいよ床本の本文となります。
ここには、太夫のせりふがすべて書かれています。
ですから、舞台袖の辺りで、太夫と三味線が演じる場所を「床(ゆか)」と言うそうですが、
内子座の床で太夫が唸る時に、書見台に置いている本の内容が、
この中に全て書かれているのです。
太夫は、これを見ながら、せりふを口上しているわけです。
内容は、というともちろん文語体の五七調、もしくは七五調で、
たいへん語呂が良い言い回しです。
たとえば、笑い薬の段の出だしはこうです。
「行く空の、
雲の足より雲助が足並み早き東海道。伝馬、人足、歩(カチ)荷物、
吸い付けて行く煙草さへ、五十三次打ち続く、中に取り分け賑わしく、
おじゃれが髪も嶋田の宿。・・・」
この床本のせりふが聴き所なら、
せりふに合わせて、人形が振舞うしぐさが、文楽の見所です。
中でも、人間国宝・吉田文雀が操る人形はみごとでした。
文雀が操る朝顔(実は娘深雪)は、盲人です。
盲の歩くさま、座敷へ上がる様、一つ一つの所作が、
盲人であるなら、さもありなんと思える仕草なのです。
いや、人形ゆえの細やかな仕草や、人形ならではの見せる表情が
なんとも、みごとなものでした。
また、人間国宝鶴澤清治が弾く太棹の三味線も聴き応えがありました。
見どころ、聴きどころ満載の楽しい文楽でした。
それから、今回は、昼食が、オーベルジュ内子 でした。
大人の空間が楽しめる、優雅な洋風定食で、
Den10の会のみなさまと、ぬる燗をいただきながらのひと時でした。
フレンチ風のメインディッシュ & オーベルジュ内子でのランチ風景です。
バスに揺られての長旅でしたが、ぬる燗を静かに傾ける時に、
また、文楽ですごす空間と時間と、まさに至福の旅でした。