投稿日: Aug 19, 2011 2:46:3 AM
速報で、8月の(第6回)邦楽いろは談義は、お伝えしていますが、
お盆休みを終えましたので、当日の模様を織り交ぜながら、
「着物しぐさと舞」での、古澤侑峯さんのお話しをあらためてお伝えします。
8月10日(水)の会場は、広島市の中心部、
広島市中区胡町4-24 クリタビル5階の「粋楽」(「ずいこ」姉妹店)。
広島の最高気温は、この日35度の猛暑でしたが、40名の参加者となりました。
この日サプライズは、舞「鶴の声」でした。
「鶴の声」
家元古澤侑峯さんの舞がはじまり、会場は地歌舞に引き込まれ、魅せられました。
いよいよ、「着物しぐさと舞」のお話し、そして最後は舞体操でした。
参加者全員が、古澤さんの指導で「左足を前、肩越しに右かかとを見て、」と、
舞体操を楽しみ、身体をほぐしました。
舞体操 手は前に・・
では、いよいよ本題「着物しぐさと舞」のお話しを、抄録でご紹介します。
抄録でなく、お話の全部を詳しく見たい人は、こちらから。
お祝い曲でございまして、雨の日に出会った二人はしっとりと、
「足拭く宿にしめやかに」と、足を拭く宿と申しますのは、
そんなに立派ではない素朴なお宿で、立ち寄ってお茶飲むだけなら足は拭きません。
うえに上がってお泊りしたという事で、しめやかに語り明かしたと言うことで、
何をか言わんやで、ちょっと想像していただきまして…。
きょうはありがとうございます。
突然、舞わせていただきましたのは、「鶴の声」という曲です。
「着物しぐさ と 舞」 (抄録)
お話し: 古澤流家元 古澤侑峯
地歌と地歌舞
日本には、舞と踊りがございます。
外国ではダンスという言葉で、それひとつで表します。
明治に何でも西洋風にしなければいけないという風潮でした。
この時、二つの言葉が有るのはちょっと時代遅れじゃないか、一つにしようというので
日本の舞と踊りをひとつにして、日本舞踊という言葉ができました。
ちなみに、谷崎(潤一郎)さんは地歌を習われて、はじめにこの歌を習われて、
非常に覚えが悪うございまして、「軒の雨、立ち寄る影は難波津や」 という
「軒の雨・・・」ばかりやってらっしゃるので、お友達に、
「雨上がっちゃうよ」と、からかわれたそうでございます。
そういうふうに、ちょっと文学的であったり、色々伝説もあります、
地歌や地歌舞なんですけども、地歌舞なんてありまご存じないか、と思いますので、
着物しぐさのお話しに入っていく前に、舞のお話しから入らせていただきます。
舞と踊り
日本舞踊というとみなさまぱっと思い浮かべる、藤娘とか鷺娘など派手な歌舞伎の中で
踊られる舞踊がございますねぇ、これが踊りでございました。
地歌舞のほうがなにせ地味なもので、当時の人はちょっと時代遅れと思いまして、
歌舞伎舞踊のほうがモダンだったのですねぇ。それが全盛期を迎えました。
やっと最近になって、地歌舞の良さも皆さん分かってきてくださっているようでございます。
この二つがあります。
舞と踊りの語源
踊りのほうは、歌舞伎舞踊の踊りと盆踊り。各地でこう派手に動くものですね。
元もと踊りと言う語源が、飛び上がると言う跳躍の躍というイメージだったんです。
こういう意味を踊りのほうに転化して、舞のほうは廻るという意味だったんですね。
それから分かりますように動きも飛び跳ねる激しいものと、廻るだけの静かなものになりました。
地歌舞
舞というと能のほうには、神宮なんかで舞われます雅楽の舞ですとか、
地方にもあります神楽舞とか、それと地歌舞でございます。
地歌舞は地歌がだいたい室町(時代)に、お能ができたころにできておりまして、
当時は琵琶で歌われておりました。
そんなことで、地歌が有ったころから、地歌舞は有ったようでございます。
残念ながら、地歌も地歌舞も口伝なんです。
地歌舞でよくご存知でなのは京都の舞妓さん、大阪の芸妓さん、これは舞です。
私の舞いました舞は古澤流と申しまして、元もと、姫路城に伝わってきました御殿舞を
もとにできた地歌舞なんですね。
きものと洋服
実は私の母はずーと大阪の船場の生まれなのですけれども、
彼女が小さいころは女の子は着物を着せても、小さいころは着物は結構引っ掛けるんですよ。
洋服だと、切り刻んでぴちぴちっと作るじゃないですか。
確かに動きやすくて合理的で、便利なんですけれども、
着物って何か自立しているような気がするんですよね。
布は四角いまま、できるだけ四角いまま切っていって、身体を合わす。
丸い身体に四角い布をあわして、そして余った所を袖とかこの皺になったところが飾りになる。
着物の場合は、帯を結んで便宜上結んで、それが美しい形になるという、
そういった意味では合理的なんではないかと思っていますが、
それだけに余った部分が多いですので、ちょっと日常の仕草も必要なわけです。
着物のしぐさ
物を取るとき洋服だとバーとこう取りますよね。
お洋服だと肌を露出しても平気ですが、着物ですとここガ~と開いていると変ですし、
手がにゅーと出ると恥ずかしいんですよね。
ですから、何か取るときもこういうふうに手を添えて袂を持つて取るとか、
それがちょっと、奥ゆかしく、美しく、そして隠す色気。でも結構色っぽいですよねぇ。
あの若い女お子が髪の毛ロングでおしゃれなお嬢さんが浴衣で髪の毛あげて
襟足が見えると、ちょっとゾッとするほど色っぽかったりしますよね。
そういう隠してみせるという演出がすごくされていると思います。
ですから風がすごく吹いてきたときでも、やはり裾がめくれるからここをちょっと押さえる。
しぐさと姿勢
持って帰っていただきたい仕草ですが、姿勢ですね。
着物を着ますと帯が有ります、舞を習い初めの子に着物着せますと、
急に姿勢が良くなりますので、「あら、姿勢良くなったわね。」といいますと、
帯がきつくて前に曲がらないというんですよ。
しゃんとします帯をしますとね。慣れるまで腰が痛かったりしますが、慣れるとしゃんとします。
なで肩をつくる
日本人って、着物が似合わない方っていらっしゃらないんですよ。
いかり肩で着物が似合いませんという方はだいたいこうしていますね。(と、猫背の姿勢に)。
「私いかり肩で、着物似合いません。」そんなことないんです。
こうして胸を張って手を後ろにやって、脇の下にすこし卵が入るようにキューとしないで
ふわっと。手は背中から生えてきた。エンゼルの羽根背中から生えていますよね。
あそこらからふわふわと手が生えてきて、こちらの前にぽんと乗ったと。
そういうイメージでしますと、とても丸みを帯びてきますので、なで肩に見えるじゃあありませんか。
そして、あごを引いて、・・・
美男美女のセオリー
10年ぐらい前のアエラに美男美女の顔のセオリーが出ていました。
子供の時ほど顔がきれいで、だんだん変わっていくそうなんですが、
顔の上半身下半身で言うと下半身が伸びてくるんだそうです。
下半身が小っちゃいほうがきれいなんです。それは簡単なんです。
すり足でヒップアップ
姿勢も気をつけていただいて、何より良いのは舞で歩きますすり足といって
踵を上げずに歩く練習をするんですね。そしてひとつには足を出すのに、
一緒に腰を出すとこうなるので、どうしても片方に体重が乗りますから
モンローウォークに近くなるのですが、
足を出して体重をグーッと前にやる、足を出してから体重を、腰を決めてグーと前にやる。
こうすると腰が揺れて見えませんのと、これをずーとやっていますと、実はヒップが・・・
美しい立ち方と歩き方
着物を着たとき、男の人と女の人の美しい立ち方、歩き方と申しますか、
膝と、足袋ですと親指とほかの指が割れる真ん中に筋がありますよね。ここが、だいじです。
よく女の人は着物を着てもこうしますけど、これはちょっと無駄な立ち方で、
そのまま美しい人も有るかもしれませんが、本来の美しさではありません。
じゃあ男の足はどうかというと、姿勢だけではないんです。
膝です。膝をカッといって、だいたい男の人はこういう歩きかたしますけれども、
特に足をここまでするので、ちょっと足は内ッ側というか、膝と足の指を足袋の筋と同じ方にして
腰を入れてこういうふうに歩くと男っぽいでしょう、ちょっと。(と実演して見せる)。
女の子もちょっと色っぽい粋な女性はちょっと斜めに立つて見るとか、ね。
そういう意味では、仕草だと思いますけれども。
Q:舞のとき、扇を前に置いて舞ったのはどんな意味が?
A:扇子の作法ですね。
流派によって全部違うが、古澤流は姫路城の御殿舞から来ているので、
これは武家の作法です。
前に置いてご挨拶するのは、私がへりくだっている。あなたと私は同じ部屋の中で
ご挨拶するのは非常にもったいないことで、結界を置いて、そちらは身分の高い方、
私は身分の低いものですという意味で、前においてご挨拶する。
あとは扇子をきれいに入れたり出したりする仕草なんです。
ご挨拶の時、左手を先にまっすぐ出して右手を脇から出しました。
左は和ものでは目上なんです。ですから・・・
地歌舞は気配の文化
地歌舞はちょうどこういう空間で舞うのが一番良いのです。
日本舞踊、歌舞伎は劇場で舞います。
舞台で起きることは人殺しが起きようが、なにが起きようがお客様は安全です。
ちゃんと舞台と客席が分かれている。
地歌舞は違います。お座敷舞と申します。座敷の中で舞われて
気配を感じる空間で、舞は舞われたものなのです。
ですから、ずっと居なくても良いのです。
気配で感じる、同じ空間で感じて、何かひと時を楽しむというのが
地歌舞、地歌というもので、気配を感じるのは
そういった小さな空間が良いのではないかと思います。
歌舞伎は型があってそこに心を入れていきますね。
私はそれは難しいと思います。地歌舞は型が後なんです。
気持ちを持っていって動きになった時、型ができるという、そういう文化です。
日本の文化はとても奥が深いと思います。
着物文化そのものが無駄なものを付けておいてね、でも無駄じゃない。
これがお袖がかわいらしい。そして袖も、いろんな意味合いがありますよね。
思いますのは、虫の音を聞いたりする。自然のものを大事にする気持ち。
これが着物の、四角を四角なまま着物にするというのにもついていますし、
そして、着物を着ることで仕草が美しくなる。
ちょっとした心配りができるようになるということだと思います。