投稿日: Feb 13, 2012 3:36:17 PM
邦楽いろは談義の第9回は、
三味線と箏の稽古場を見学して、体験入門しました。
広島国際ホテルロビーに集合したこの日のメンバーは5人。
揃ったところで、地歌三味線の当道会一樹会の
紙屋町教室を訪問しました。
すでに、教室で稽古は始まっていて、そろりと教室の部屋に入り、
師範の託見育子先生が指導する三味線の稽古を見学しました。
そして、託見先生から三絃(三味線)の基本を教わりました。
託見先生から聞いたお話を、再現しますと・・・。
『まず、三味線にはサワリが有ります。一番太い糸を一の糸と呼びますが、
天神という糸を巻く部分で、二の糸、三の糸には有る上ゴマと呼ぶ金具がなくて、
直接棹にあたっています。一の糸は棹に触れてしまっています。
これをサワリと言い、これが有るのでビーンという特殊な音になります。
サワリがついていないと、三味線はよく鳴りません。
「話のサワリ」、とか「サワリの部分を」とか、日常語になっていますが、
三味線音楽から日常語に転化した言葉はいろいろあります。
合奏で、箏に一番近いところに座っている三味線をタテと言います。
一番偉い人、先生が座る場所で、相手をタテるという意味に転じて使われています。
それから、話のツボといいますねぇ。ツボが良いとか。
日本人には、とても慣れ親しんだ楽器だったので、
日常会話にいろいろ使われるようになったんだ、と言われています。
さて、真ん中を二の糸、一番細い糸を三の糸といいます。
よく見ていただくと、太鼓があって、
打楽器の上に絃楽器がある特殊な楽器です。
太鼓も撥でたたきます。三味線も同じなんです。
そもそも、中国大陸から来て、琉球に渡り、
そして九州から本州に渡ったというふうな説がありますが、
琉球に来た時、撥がなかったんだそうです。
この楽器だけが伝わってきて、
琉球の人はどうやって弾いていいか分からないから、
指で弾いて、それが三線(さんしん)になったんです。
琉球はハブがいるから蛇の皮を張って三線になり、
九州に来るとハブはいないから、猫の皮を張り三味線になったんですね。
その時やはり、撥が伝わらなかったので、
どうやって弾くんだろうと琵琶法師のところへ持っていったんです。
琵琶の先生は、大きな撥で弾くと思っているから、
そこで初めて、このような(幅の広い津山)撥を使うようになったんです。
伝承されていくなかで、変化していった楽器です。
いま、親指と人さし指にはめているのが「指摺り」です。
指を棹に滑らすとき、滑りやすいようにするために、はめます。
糸のかけ方、根緒は割愛します。糸は蚕の絹の糸、贅沢な楽器です。
つぎに弾き方に移ります。三絃の基本は、本調子です。
調子が良いとか、悪いといいますね。
二の糸が一音上がった調子を二上がり、音が少し明るくなります。
三の糸が一音下がったのを、三下がりといいます。
そのままですね、分かりやすいですね
三味線の構え方です。格好も大事です。
ただ、津軽三味線はすこし地歌三味線とは違うので、
津軽の人は姿勢が悪いわけではないのです。
Q:先生、撥があたる。というのも、三味線からですか?
A:はい、練習していない生徒さんに撥の先をポンとあてるのからきています。
Q:三味線はいまも、皮は猫の皮を使うんですか?
A:そうです。いまも動物の皮です。ですから、
動物愛護団体の人からクレームがきて、私たち三味線弾きが
署名活動などして、伝統楽器を絶やしてはいけないというので、
日本の法には触れるので、中国の猫の皮を輸入しています。
他には替えられないかと、合皮とか和紙とかためしていますが駄目ですね。
やはり、猫の皮には及ばないですね、音が。他には変えられないですよね。』
と、先生の話は、
現代の日本の三味線が直面している、大きな課題にまで及びます。
そして、いよいよ体験入門で、参加者が実際に三味線を弾いてみました。
まず、三味線の構え方と持ち方から。
膝ゴムを置いて、膝と三味線のど真ん中の位置を膝に置いて。
腕を置くところを胴掛けという、胴掛けのど真ん中に腕をあてます。
そのフォームをまず覚えます。
つぎに、撥の持ち方。
親指と小指の間で、富士山を作るように。
撥のえじりの端に錘が入っていますので、
中指があたったところが、ちょうど真ん中になるように。
では、三味線を持って、撥を持ちます。
譜面。漢数字に人偏がついている音は、一の糸を弾きます。
漢数字は、二の糸を弾きます。算用数字は三の糸を弾きます。
1、一、は開放絃。棹の継ぎ目が5のツボ。
それだけ習って、数え歌を稽古しました。
三絃指導の託見師範の手引きで数え歌を稽古。
古典へのたゆまない研鑽を積みかさね、地元広島と東京を舞台に、
活躍する新進の箏三絃演奏家の指導で、
たちまち、体験入門の生徒さんも弾けるようになりました。
なごやかで、たいへん楽しい稽古でした。
さらに、このあと箏の楽器の説明を聞き、稽古の様子を見学しました。
箏の始祖八橋検校の功績、キンの琴とソウの箏の歴史的な話から、
江戸時代の箏と盲目人の職業、そして菓子の八橋と検校の関係など
たくさん薀蓄のある、眼からうろこの話が箏でも続きました。
また、ぜひ託見先生のお話を聞いてみたい、と
体験が終わった後の生徒さんの感想でした。
2月の邦楽いろは談義の記録
テーマ :「三絃・箏の稽古場見学と入門体験」
開催日時:2月8日(水) 午後6時00分~午後7時30分ごろまで
会 場 :広島市中区紙屋町1-5-18 3階の教室
内 容 :三味線と箏の稽古を見学。
三味線体験入門。・・・・当道会師範の指導で、三味線を体験。
参加者が地歌三味線を実際に手に取り、撥で弾きました。
参加者:5人 三味線を体験した人:3人