(96)釣り師のこころ
2014/07/28
へら鮒釣りからは既に引退している元会長の吉野氏に春季大会の賞品に竿を寄贈頂いた。
釣りを辞めたのなら中古屋にでも売り払えば良いのだが、所属していた会の大会を盛り上げる為に寄贈するってのが流石である。
今でも「名会長だった」と言われる由縁だろう。
フト、そういえば吉野氏は以前、たまに会報に寄稿してたな・・・と思って古い会報を引っ張りだしてみた。
読んでみると流石に良い事が書いてあるので、長文だがHPにも掲載したいと思う。
以下平成9年度会報への寄稿文である(極力、原文のまま。一部、団体名・個人名称は伏せる)。
「釣り師のこころ」
最近思いついた事を記事にしました。
(1)
壮年?に達したせいか例会で皆さんの顔を見るのが本当に楽しみになってきた。
月に1度の例会だ。
その日は年齢の事などすっかり忘れ、まるで少年の様な気分になり馬鹿話のひとつも出る状態です。
いくつになっても競争心は衰えない。
「さあ、やろう!」と段取りするのが一番の楽しみ。
これでそこそこ釣果があればもっと嬉しくなってしまうのだが、世の中そう甘くはないね。
私の場合、水中の魚と餌の状態を想像して、消し込みのあたりで釣れたりすると、こんな具合に吸い込むのかなと自然に唇が尖ってしまう。
もやもやの動きで終わってしまう様な時はバラケの粒子に触るだけでどうして食い込まないのか、逆にカラツンが続く時などは本当に悩んでしまう。
浮気な彼女じゃないけれど、素振りだけで乗ってくれない。
そうなると余計に餌をいじくりまわしてしまう様になる。
どうですか、皆さんもそんな事がありませんか?
浮子を通してへら鮒とのやりとりは海釣りやルアーでのバス釣りでは味わえない奥深いものがある。
それがへら師のこころと云うのか。
釣りたい釣りたいの一心で無理をしてはいけないよと自分で戒めている。
さて、例会。即ち競技会である以上、他人より沢山釣って良い成績を修めたいと思うのは誰しも同じです。
より研究して魚と対話出来る位の心掛けが必要かもしれない。
例会には規則がある。
ルールを破ってまで釣果を望むのは邪道ですね。
例えば、管理釣り場のタナ規定には多少のゆとりを持つ位の気持ちでやりたいし、スレ取りの検量はしない等々、誤解を招く様な事はしない様に注意しましょう。
これらは当人が一番良くわかっている事です。
自分で自分を傷付ける様な事はしない様に。
それも気にしなくなったら何をか云わんやである。
気心の知れた友人同士の例会です。
規則を守ってフェアーにやろう。
(2)
へら鮒、月刊へら、へら専科、週刊へらニュースなど参考になる専門誌があるが、私は「へら鮒」を購読している。
発行者が所属しているという事もあるせいか、比較的「**会」主体の記事が多いが、なかなかよい事も載っていると思う。
「**会」の話が出たので一寸感じている事を書くとします。
先ず出席率が非常に良い事だ。
暇人が揃っているからだと悪口も言われるが、噂に聞くと100%に近いとか。
プロのインストラクターも大勢いるので競い合う楽しみもあり、又それを見て何かをつかもうと釣技の向上に努めている人も居る。
名会長の**さんが亡くなっても益々充実した研究会として発展するものと思っている。
**さんとは面識がなかったが、聞くところによると、何かと面倒はよく見たが、厳しい面もあったそうだ。
特に役員には「奉仕のつもりで参加しろ」と云われたと聞く。
しかし、それ以上に会長は気を遣われたと思う。
そうでなければ百数十名の会員をまとめる事は出来なかったでしょうね。
それでは会員の皆さんはどうだろう。
会長を盛り立て、役員の指示によって行動し他の者に迷惑を掛けない様にして皆で楽しむ事に努めている。
立派だと思う。
(3)
我々、二水会もこれらの点では劣っているとは思わない。
会員こそ三十数名と少ないが、島根会長のもと役員諸氏、会員の方々が互譲の精神をもって例会を重ねている。
ましてや今年は他の会ではやりたくても出来ない創立50周年を迎える事によって一層の団結を計ろうではありませんか。
歴史の古い事が必ずしも良いのだと自慢することもないけれど、これを維持し、次の世代に継承しようとする我々の親睦と努力は誇りに思ってもよいのではないでしょうか。
秋に行われる記念釣り大会が楽しく出来る事を心から期待しております。
【感想】
へら鮒釣りに対する知見・姿勢、会運営に対する考察、二水会への愛情等々、流石である。
この記事を書いた当時は吉野氏は相談役。
歳もそれなりな為か、釣果云々より、ゆとりを持ってへら鮒釣り・例会を心から楽しむ姿勢が強い感じがする。
ウチの会員には先輩でもこき下ろす口が悪いヤツが多いが、吉野氏の事をどうこう言ってるのは過去に聞いた事がない。
吉野氏が穏和な人格者だった故であろう。
私もこうなりたいものである(無理か?・笑)