時にシユヒ人(びと)ビルダデ答へて曰(いは)く
何時(いつ)まで汝かゝる事を言(いふ)や何時(いつ)まで汝の口の言語(ことば)を大風(おほかぜ)のごとくするや
神あに審判(さばき)を曲(まげ)たまはんや全能者(ぜんのうしゃ)あに公義(こうぎ)を曲(まげ)たまはんや
汝の子等(こども)かれに罪を獲(え)たるにや之(これ)をその愆(とが)の手に付(わた)したまへり
汝もし神に求め全能者(ぜんのうしゃ)に祈り
清くかつ正(たゞ)しうしてあらば必ず今汝を顧(かへり)み汝の義(たゞし)き家を榮(さか)えしめたまはん
然(しか)らば汝の始(はじめ)は微小(ちひさ)くあるとも汝の終(をはり)は甚(はなは)だ大(おほい)ならん
請(こ)ふ汝(なんぢ)過(すぎ)にし代(よ)の人に問(と)へ彼らの父祖(ふそ)の尋究(たづねきは)めしところの事を學(まな)べ
(我らは昨日より有(あり)しのみにて何をも知(しら)ず我らが世にある日は影のごとし)
彼等なんぢを敎(をし)へ汝を諭(さと)し言(ことば)をその心より出(いだ)さゞらんや
葦(あし)あに泥(どろ)なくして長(のび)んや萩(をぎ)あに水なくしてそだたんや
是(これ)はその靑くして未(いま)だ刈(から)ざる時にも他の一切(すべて)の草よりは早く槁(か)る
神を忘るゝ者の道は凡(すべ)て是(かく)のごとく悖(もと)る者の望(のぞみ)は空(むな)しくなる
その恃(たの)む所は絶(たゝ)れ その倚(よる)ところは蜘蛛網(くものす)のごとし
その家に倚(より)かゝらんとすれば家(いえ)立(たゝ)ず之(これ)に堅(かた)くとりすがるも保(たも)たじ
彼(かれ)日の前に靑緑(みどり)を呈(あら)はし その枝(えだ)を園(その)に蔓延(はびこ)らせ
その根を石堆(いしづか)に盤(から)みて石の屋(いえ)を眺(なが)むれども
若(もし)その處(ところ)より取(とり)のぞかれなばその處(ところ)これを認めずして我は汝を見たる事なしと言(いは)ん
視(み)よその道の喜樂(たのしみ)是(かく)のごとし而(しか)してまた他(ほか)の者地より生(はえ)いでん
それ神は完全人(まつたきひと)を棄(すて)たまはず また惡(あし)き者の手を執(と)りたまはず
遂(つひ)に哂笑(わらひ)をもて汝の口に充(みた)し歡喜(よろこび)を汝の唇(くちびる)に置(おき)たまはん
汝を惡(にく)む者は羞恥(はぢ)を着(き)せられ惡(あし)き者の住所(すみか)は無(なく)なるべし