バビロンの處女(をとめ)よ くだりて塵(ちり)のなかにすわれ カルデヤ人(びと)のむすめよ座(みくら)にすわらずして地にすわれ 汝(なんぢ)ふたゝび婀娜(なよゝか)にして嬌(あて)なりととなへらるゝことなからん
[すりうす]をとりて粉(こ)をひけ [かほおほい]をとりさり袿(うちぎ)をぬぎ髓(すね)をあらはして河(かは)をわたれ
なんぢの肌はあらはれ なんぢの恥(はぢ)はみゆべし われ仇(あだ)をむくいて人をかへりみず
われらを贖(あがな)ひたまふ者はその名を萬軍(ばんぐん)のヱホバ、イスラエルの聖者(せいしゃ)といふ
カルデヤ人(びと)のむすめよ なんぢ口をつぐみてすわれ 又くらき所にいりてをれ 汝(なんぢ)ふたゝびもろもろの國(くに)の主母(とじ)ととなへらるゝことなからん
われわが民をいきどほりわが産業をけがして之(これ)をなんぢの手にあたへたり 汝これに憐憫(あはれみ)をほどこさず年老(としおい)たるもののうへに甚(はなは)だおもき軛(くびき)をおきたり
汝(なんぢ)いへらく我とこしへに主母(とじ)たらんと 斯(かく)てこれらのことを心にとめず亦(また)その終(をはり)をおもはざりき
なんぢ歡樂(たのしみ)にふけり安らかにをり 心のうちにたゞ我のみにして我のほかに誰もなく我はやもめとなりてをらず また子をうしなふことを知(しる)まじとおもへる者よ なんぢ今きけ
子をうしなひ寡婦(やもめ)となるこの二つのこと一日(ひとひ)のうちに俄(にはか)になんぢに來(きた)らん汝おほく魔術をおこなひ ひろく呪詛(まじなひ)をほどこすと雖(いへど)も みちみちて汝にきたるべし
汝(なんぢ)おのれの惡によりたのみていふ 我をみるものなしと なんぢの智慧(かしこき)となんぢの聰明(さとり)とはなんぢを惑(まどは)せたり なんぢ心のうちにおもへらく たゞ我のみにして我のほかに誰もなしと
この故(ゆゑ)にわざはひ汝にきたらん なんぢ呪(まじな)ひてこれを除(のぞ)くことをしらず 艱難(なやみ)なんぢに落(おち)きたらん 汝これをはらふこと能(あた)はず なんぢの思ひよらざる荒廢(あれすたれ)にはかに汝にきたるべし
今なんぢわかきときより勤(つと)めおこなひたる呪詛(まじなひ)とおほくの魔術とをもて立(たち)むかふべしあるひは益(えき)をうることあらん あるひは敵をおそれしむることあらん
なんぢは謀畧(はかりごと)おほきによりて倦(うみ)つかれたり かの天をうらなふもの星をみるもの新月をうらなふ者もし能(あた)はゞ いざたちて汝をきたらんとする事よりまぬかれしむることをせよ
彼らは藁(わら)のごとくなりて火にやかれん おのれの身をほのほの勢力(いきほひ)よりすくひいだすこと能(あた)はず その火は身をあたゝむべき炭火(すみび)にあらず又その前にすわるべき火にもあらず
汝(なんぢ)がつとめて行(おこな)ひたる事は終(つひ)にかくのごとくならん 汝のわかきときより汝とうりかひしたる者おのおのその所にさすらひゆきて一人だになんぢを救(すく)ふものなかるべし