流 れ 橋
流 れ 橋
木津川には何本もの橋がかかっている。その中で、八幡市と久御山町を結ぶ上津屋橋が、「流れ橋」と親しまれて人気があるという。
地図で見ると、私の家から自転車で行ける距離なので、秋の一日、出かけてみることにした。
小畑川を渡り、そのまま進んで行くと、やがて桂川が見えてくる。
中州には丈の高い萱が生い茂り、水鳥が舞っていた。石清水八幡宮の方向に、天王山の山並みを遠景に見ながら、気持ちのよいサイクリングロードをしばらくひた走る。
次は宇治川に掛かる御幸橋を渡る。休憩して青い流れにしばらく見入った後、いよいよ木津川沿いの堤防の道に入って行く。
木津川は、川幅も広くはなく緩やかできれいな流れに見えた。今度は川を左手に見ながら遡って行く。岸辺の草が爽やかな風に揺れ、とても走り易い快適な道だ。
家を出てから二時間。目指す「流れ橋」が見えてきた。全長三百五十六メートル。手すりのない幅三メートルほどの木の橋で、増水して水位が上がると、橋板部分が八個に区切られ、いかだのようになるので、この名があるという。
自転車を岸に止め、歩いて渡ってみる。訪れる観光客は結構多い。
流れの中にコサギが置物のように立ち、時折餌を漁っている。小さな魚が流れを泳ぐのも透けて見える。岸には白い砂地が細長くのびて、水遊びする人もいた。
この橋は近年、テレビの時代劇の撮影に使われることで知られている。ロケ地は現代の新名所なのだろう。いかにも時代劇ファンのような顔をして、私も今日ここへやって来たけれど、実はどの番組にこの橋が登場するのかは、よく知らないのである。
時代劇と言えば、以前私たち一家が仁和寺の近くに住んでいたとき、偶然境内で二度ほど、時代劇の撮影に出くわしたことがあった。
祭りののぼりをたくさん立てて、お面の露店などが並ぶ縁日の情景を撮っていた。通行人の町娘の着物は古く色あせたものを使っていて、意外に思った記憶がある。
別の日、お寺の裏庭で二歳の長男を遊ばせていると、近くの草むらで、侍が切り合っているのが見えた。驚いたが、他に見物人はいない。息子にこういう場面を見せたら、喜ぶのか怖がって泣くのか見当もつかない。撮影の邪魔にならないよう、地面に木の枝で絵を描いて、静かに遊ばせた。時折顔を上げると、侍が走ってきては草の中に何度も倒れ込む。非現実の世界が目の前にあった。
川原の木陰で流れを見つめ、あれこれ思い出しながら、お握りを食べ麦茶を飲んだ。帰りにみやげ物店を覗くと、テレビ番組にちなんで、道中カッパやすげ笠、十手、煙草入れ、印籠などの時代劇グッズが色々並んでいた。
(2004・1・14)