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当種は、2002年12月に静岡産の新種として報告された。(岩月・他2002)関東地方では、生育が広く報告されており、2010年に東京都八王子市で確認されたことから(堀2010)、関東地方では群馬を除く全県から報告されている。しかし、関東以外では、僅かに静岡、愛知、山口のみから報告されているだけである。(樋口2003・その他)
均茶庵は、松田町で2009年12月に初めて採取した。当初はマユハケゴケC.fragilisと考えていた。しかし、2017年2月に至り、改めて既発表論文と対比した結果、題記種と同定した。当種は、広披針形の無性芽が乾燥時にエビ状に曲がる事、無性芽に中肋がある事、葉の先端に鋸歯があること等から、マユハケゴケから区別される。又、人間とのかかわりの深い地域に見出されている。(木口・他2004)
当種は、既に県内各地計約20ケ所から報告されており、他県に比べて生育確認の事例が非常に多い。現在までに、県内では平塚市(複数)、横浜市(複数)、小田原市、湯河原町、愛川町、箱根町、相模原市(旧藤野町)から報告されている。詳細は、省略する。
均茶庵は、下記3ケ所で採取している。いずれも、文献記録はない。
1. 松田町西明寺廃寺 標高447m
池脇の廃棄された木柵上に生えていた。木柵は既に腐木となっていた。1221年に創建され、1469年に移転してしまったこの寺は、当時真言密教の聖地として栄えた。今は、ハイキングコースとして整備されており、特に春には、沢山の花見客がやってくる。それ以外は、静まり返っていて、ほとんど人影を見かけない。再確認のため、2016年12月に改めて行ってみたが、枯れ木の山は綺麗に片づけられていた。周辺を調べてみたが、残念ながら全く見つからなかった。
2. 山北町世附林道 標高336m
世附橋西側の林道を西に少し入ると、昔は材木の集積場だったような、あるいは、その先にはキャンプ場の跡だったような場所に行き当たる。この入口に、切り倒した木が積んである。既に朽ち木となっていた。比較的日当たりの良い、しかし、湿り気のある木の上に群落ができていた。2018年6月。
3. 伊勢原市栗原 標高 147m
神武天皇6年に創建されたという古い伝承を持つ相模三の宮比々多神社に、初詣の参拝をした。この神社の祭礼には、近くの栗原川上流にある三段の滝からお水を取るしきたりとなっている。林道から三段の滝の参道へ少し入った、日当たりの悪い場所に、杉を伐採した木が積んであった。既に朽ち木となっていた。ここに、群落があった。2019年1月だった。
新東名高取山トンネル工事のため、地下水脈が断ち切られ、三段の滝は、2018年夏頃から水がなくなってしまったそうだ。お水取りの行事も、場所を移している。川の水が田んぼの水源にもなっているため、何とか滝を復活できないかと、現在ボーリング調査をしている由だが、滝は未だ涸れきっている。水神様の祠がむなしい。
【野口】campylo曲がる pus足。蒴が曲がった柄から下垂。
【牧野】G. kampylo曲がる
【e-Floras】 G. campylos, curved, and pous, foot, alluding to curved seta
【Smith】meaning bent foot, referring to the arcuate setae.
【Crum】The name alludes to the curved “foot”, or seta, characteristic of the genus.
【秋山】「campylo=湾曲+pous=脚」
【田中】ギリシャ語でkampyloは曲がった、pousは足を意味する。白鳥の首のように曲がったさく柄に由来する。
{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。