均茶庵は、コロナのワクチン注射をしない人だ。だから、この2年間は、神奈川県外に一歩も出ていない。県内でも、人が集まる横浜や鎌倉などの街や丹沢の山頂には、全く踏み込んでいない。しかし、この引き籠もりに、そろそろ精神的な限界がやって来た。遂に堪らずに、この3月に箱根の金時山(標高1,212m)に登った。平日だと言うのに、僕と同じような人が結構いた。
久しぶりの金時山
2年間の間に、完全メタボになった体を引きずった。だから、登山中は顔をずっと俯いていた。そして、矢倉沢峠~金時山頂登山道の標高965mでマユハケゴケCampylopus fragilis(県絶滅危惧種II)と標高1,160mでミヤマミズゼニゴケCalycularia crispula(県絶滅危惧種II)を見つけた。昔一世風靡のNexus-7タブレットにアップロードしている「コケ図鑑均茶庵バージョン・保平版」注で調べると、間違いなさそうだ。ミヤマミズゼニゴケについては、その後Okamossの田村英子氏に確認いただいた。
注)Nexus-7のメモリー容量が、1.8Gbしかないので、「「コケ図鑑均茶庵バージョン」をそのままアップロードすると、容量不足になってしまう。このため、保育社と平凡社の図版・写真と均索表のみで構成した、「保平版」を作った。
大発見に歓び勇んで家に戻ると、早速文献をチェックした。何と、平岡・他(2006)に報告がある。同じ登山道だ。標高は、それぞれ930m/960m及び1,150mと記載されているから、手元GPSの誤差を考えると、同じ場所に違いない。『たまたまとは言え、こういうこともあるんだ。』と驚いた。
たまたまコケ・・タマゴケじゃない。
そう言えば、コキジノオゴケCyathophorella hookeriana (県絶滅危惧種II)でも同じ様な事があった。神奈川県では、報告が合計6ヶ所ある。その内、箱根の箱根峠と須雲川(勝俣. 1972)の2ケ所については、2007年の時点で再確認されていないから、もう消滅してしまったものと思われる。大山の参道石垣については、現状は不明だ。2006年版県RDBには、「ごく少量」とあるから、既に消滅してしまったのかもしれない。従って、残りは3ケ所だ。
1.南足柄市 大雄山最乗寺 標高350m
2013年8月に、開山祖師座禅石脇の碑で、確認した。後で調べてみたら、丸で同じ場所から木村・他が1999年に報告していた。均茶庵は、「たまたま」見つけたわけだ。
2.伊勢原市日向川 標高376m
2013年10月に、ふれあいの森キャンプ場入り口の大岩で、ムチゴケと混生している群落を見つけた。その後2016年、2017年と無事を確認している。慶応大学の有川先生に文献を教えて頂き、調べて見たら、2006年に佐々木が報告していた。均茶庵は、再び「たまたま」見つけたわけだ。
3.厚木市 大山三峰山 標高375m
2017年11月に、林道二の足線終点にある一ノ橋近くの岩で、群落を確認した。この岩の前で、お昼にセブンのおむすびを食べていて、ふと見つけた。家で文献を調べて見ると、こちらも、佐々木が2006年に報告していた。ここでも均茶庵は、「たまたま」見つけたわけだ。
全神奈川県の中で、こんな小さなコケに、しかも、事実上3箇所しか生育していないのに、「たまたま」三度も出会わせたとは、もの凄い驚きだ。コケの世界は、広いようで狭いのか、あるいは、コキジノオゴケが、愛する均茶庵に特別に呼びかけてくれたのか。それにしても、コケの寿命と言うか、生命力の強さにも驚かされる。同じ場所に、10年以上住んでる。
そう言えば、均茶庵が藤沢市から現在の茅ヶ崎市に越してきてから、11年目だ。コケと似たようなものか。
最後に、
「007は2度死ぬ。たまたまは2個しかない。しかし、たまたまは三度ある。」と書いて、〆にしよう。
220420 均茶庵