金時山頂上
坂田公時
標高1,212mの金時山は、箱根外輪山の一番北側にある。神奈川県と静岡県と山梨県の県境に位置している。二時間程度で頂上まで上がってしまうので、軽いハイキング気分の山登りに人気がある。仙石原に面した南側は、急な切り立った崖で、直登はできないが、北・東・西の三方面には、ゆったりとした登山道がある。
今では金時山と呼ぶが、元々は猪鼻嶽と呼んでいた。何時の頃か、金時山北側の足柄山の坂田金時伝説と習合して、名前が変わった。だから、山頂の神社は、猪鼻神社と言うし、足柄山からの登山道には、猪鼻砦の跡(看板)がある。石で出来た社が3つほどある。
金時茶屋
金太郎茶屋
頂上には、茶屋が二軒ある。金時茶屋は、金時娘で有名だ。しかし、主の小宮山妙子さんは、もう80歳を越えてしまって、山頂で会うことはなくなった。それでも、休日や日曜日には、荷物を運ぶロープウェイに乗って、上がって来ることもあると聞いた。均茶庵は、人出を避けるため、山には平日しか行かないので、しかとは分からない。もう一軒の金太郎茶屋の前に立って南を見ると、仙石原が芦ノ湖まで広がり、そのまま右手に顔を向けると、秀峰富士山を直ぐそばに拝める。いつ行っても、子供から高齢者まで、山頂でお弁当を広げる姿を見る。
文献を探してみたが、金時山のコケについて専門に発表した論文は見当たらなかった。ちょっと、奇異な感じがする。奥箱根のシンボルでもあり、直ぐにでも登れる山なので、お安く見られているのだろうか。あるいは、簡単過ぎて、改めて文章にしていないだけなのだろうか。
金時山からは、下記の5種の県絶滅危惧種が報告されている。名称をクリックすると、コケの詳細サイトにリンクする。
200731 均茶庵
1. アナシッポゴケモドキ Pseudosymblepharis aungustata 県:DD
北側登山道に、小さな群落がある。標高1,131m付近だ。小さいから、まるで目立たない。一般的に、金時山のコケは、大群落と言うよりも、寧ろ自宅に戻ってから気がつくような小さな株が多いようだ。
2. イトゴケ Barbella pendula (Neodicradiella pendula) 県:絶I
RDBには、少量懸垂していたと記載されているが、どの地点での採集かわからない。
3. オオミツヤゴケ Entodon chonchophyllus 県:絶I
金時山の頂上下を囲むように、標高900~1,200mの間に分布している。東側では、現在は使われていないうぐいす茶屋付近から明神が岳にかけて分布し、又、西側では、頂上下から芦ノ湖湖尻峠まで、比較的密に生育している。しかし、北側では、頂上下の登山道に僅かに生育を確認しているだけだ。箱根は、当種の濃厚分布地域となっている。
4. タカサゴサガリゴケ Pseudobarbella lavieri 県:絶I
山頂脇の灌木から下がっていた。しかし、少量であり、自宅へ持ち帰ってから初めて同定できた。
5. カシミール・クマノゴケ Theriotia kashimirensis 県:絶I
金時山からはちょっと離れるが、地蔵堂から金時山への登山道沿いにある夕日の滝から、報告されている。滝の岩の上に生育していた由。夕日の滝では、冬場には思い切り冷え込んだ中、滝に打たれる修験者の姿を見ることもある。