ホウオウゴケ属の中でも、非常に小さいコケで、採取も屋外での同定も非常に難しい。年寄り殺しのコケだ。見つけるのも一苦労だし、その疲労感は表現しようがない。県RDBには、下記①~④が記載されている。
正直言ってジョウレンホウオウゴケとホソベリホウオウゴケvar ramosissimusの区別がもう一つ良くわからない。えいや~っと、水しぶきがかかる場所に生えていて、中肋が短く突出しているのが前者で、中肋は葉先下までしか届かなく、葉先に小鈍鋸歯があるのが後者と判断している。同定誤りがあれば、ご容赦頂きたい。
① 湯河原町 幕山~ししどの窟 標高540m {再確認}
春は梅が有名で、大変な人出になる。ハイキングコースも、良く整備されている。報告によ
ると、「幕山公園一之瀬橋より岩屋に向かう途中の沢で、流水に洗われている傾斜した岩盤
上 標高350m」に散在して群落がある由だ。(平岡, 2005)しかし、均茶庵は、ここでは
生息を確認できなかった。
ししどの窟では、2016年11月に洞窟外の小さな流れの中の転石で少し採取している。一
方、2018年11月に行った時には、上記引用した渓流では全く見られなかったし、この下
流にあたる流水中の転石の上から、採集した標本は、全てホソベリホウオウゴケだった。植
物体が非常に小さいから、見落とした可能性もある。
均茶庵は、幕山に毎年花見に行くが、どちらかと言うと、いつも花とお酒の方に溺れている。
② 南足柄市 大雄山最乗寺 標高400m {未}
神奈川県を代表する古刹だ。天狗のご利益があらたかだ。何時もお参りする人が絶えない。
人工の小さな流れの岸に、少量生育している由。均茶庵は、確認できていない。
③ 伊勢原市 日向川浄発願寺奥の院 標高290m {未}
江戸時代には、男の駆け込み寺として有名だった。犯罪を犯した人間でも、このお寺に走り
込めば、治外法権となる。この名刹は、1938年の山津波で堂宇が全て流れてしまい、1km程離れた場所に移った。旧堂宇の廃墟を、奥の院と呼んでいる。寺跡は、道路から日向川で隔てられている。この入り口に少量生育している由だ。
④ 相模原市 緑区(旧藤野町)栃本沢 標高370m {未}
水の流れる粘板岩上に、少量生育している由。均茶庵は、確認していない。
⑤ 鎌倉朝比奈切通し 標高100m {再確認}
文献上の記載はないが、かなり昔からジョウレンホウオウゴケの産地として知られている。
切通しの凝灰岩の壁の下に、湧き水を流す狭い溝が切ってある。その中の転石に沢山こびり
ついている。均茶庵は、2012年4月に採取している。
⑥ 箱根 飛龍の滝 標高576m {文献記録ナシ}
畑宿の集落が終わるあたりから山道に入り、暫く歩くと、高さ15+25mの二段の滝に出る。穏やかな流れに思わず、ほっとする。山道は更に湯坂路へと続く。滝水がかかる転石の上で2018年11月に採取した。但し、上記したように、同定には自信がない。RDBにも、箱根のコケ植物調査報告(平岡・他, 2006)にも、記載がない。ホソベリホウオウゴケの可能性も大きいが、ここは新発見としておこう。
【野口】 fissi分れた dens歯。蒴歯
【牧野】 L. fissilis割れる dens歯。葉の基部の腹側な2枚に割れているため。
【e-Floras】 L. fissus, cleft, and dens, tooth, alluding to split peristome teeth
【Smith】meaning split tooth, referring to the peristome teeth
【Crum】The name refers to the peristome teeth, which are generally split into two divisions.
【秋山】「fiss=裂けた+dens=歯」 深く裂けた朔歯の様子から。
【田中】ラテン語でfissは分裂する、densは 歯を意味する。さく歯の形態に由来する。
(作成: 190815)
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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