「岡山コケの会ニュース」No.44 (2017.8)に、「神奈川県のトゲアイバゴケ」として、下記の内容で報告した。そのまま転載する。
トゲアイバゴケChandonanthus hirtellus (Plicanthus hirtellus)は、関東では埼玉県両神村に次ぐ二件目として、金井(2011)により神奈川県、山梨県及び静岡県との県境である三国山頂(標高1,323m)で報告された。この度、神奈川県内の二か所で新たに確認したので報告する。
学名並びに和名は、平凡社の「日本の野生植物 コケ」(岩月編 2001)に従った。
記載した標本は、筆者の標本庫に保管している。
① 採集地: 神奈川県箱根町 芦ノ湖立石岬男岩 標高725m
採集日: 2016年9月12日及び10月12日
安山岩質凝灰角礫岩の湖中の独岩上に、長さ約30cmx幅約10cmの群落があった。水面からの高さは、30cm~60cmだった。男岩は、岸から2~3m程度の場所にあるが、陸からのアクセスが困難なため、カヤックを使って標本を採取した。岩の先端は、水面から2m程高さがあるが、水面から60cmを超すとシダと地衣類が優勢となり、90cmを超すとコケ類は殆ど見られなくなった。
② 採集地: 神奈川県南足柄市 金時山山頂樹幹 標高1,200m
採集日: 2016年3月31日
金時山頂すぐ脇の林の中で採取した。自宅に戻って標本を整理している際に、ハネゴケにほんの僅か混生しているのを見つけた。採取場所付近には、当種の群落は見られなかった。2017年5月に再調査した際にも、群落は確認できなかった。
本報告にあたり、標本の確認・同定にお骨折り頂いた田村英子氏(岡山市)に感謝します。
引用文献
岩月善之助編(2001).「日本の野生植物 コケ」平凡社, 東京
金井和子(2011).「三国山山頂付近のコケ植物」 神奈川自然誌資料32:19-26.
追記)210430 均茶庵
1.当種は、神奈川県RDB2020版で、新たにDDに指定された。
2.Chandonanthus birmensis アイバゴケ (県DD)との関連については、別項を参照。
【Meagher】chandon (with mouth wide open, yawning) + anthos (flower), alluding to the wide mouth of the perianth of the type species, Chandonanthus squarrosus.
新称 Plicanthus
【BFNA】L./G. plica fold, anthos flower, alluding to the plicate perianth
【Meagher】Latin plica (fold) + anthos (flower), alluding to the strongly plicate perianth.