鰯と鯖が茅ヶ崎の釣魚と心得るそんな釣り人に、昭和の時代まで、この地が鰤の大産地で、時には鮪の大群さえ網に入ったと言っても信じてもらえないだろう。鮫もとれて、蒲鉾の原料になった。そう言えば、平成30年(2018)8月には、シュモクザメが30匹ほど出現して、湘南の海水浴場が全て閉鎖になったことがある。
ここで、ちょっと難しい話をしてみたい。平島は茅ヶ崎の中で一番古い。姥島は、三浦層群三崎層と言って、後期中新世の8.2~9.9百万年前に、フィリッピン・プレートに乗っかって、まるで「ひょっこりひょうたん島」の様にやって来た。付加体と言う。平島は、姥島よりも北側にあるから、もっと古い時代にやって来た。葉山層群大山層と言って、1200万年くらい前にたどり着いた。平島から北の海岸平野や台地は、せいぜい数万年前よりも新しく堆積した言わば泥・砂の塊だ。
漁港だから、魚が旨い。漁協主催の「さかなの市」や「生わかめまつり」が開かれる。ブランドになりつつある「えぼしわかめ」は、平成21年(2009)から養殖が始まったばかりだ。カフェやショッピングがあるサザンヒルズのビルの場所には、以前「茅ヶ崎フィッシュセンター」というレストランがあった。もう覚えている人も少なくなった。茅ヶ崎名物の海鮮定食が並んだ。サザンオーススターズに名前を取った「サザエオールスターズ」とか、チャコに名前を取った「ジャコの海岸物語」と言ったような定食があった。未だシラスと言わずにジャコと言っていた時代の事だ。上手い名前を付けたものだ。平成17年(2005)年だったろうか、残念ながら閉店してしまった。
平島群島には、最大の岩礁キワノ夜明以下、キワノ大島、沖ノ夜明、沖ノ大島、スズキ島、イガイ島、ノミ磯、二ツ磯、三ツ磯、三衛門、中クボ、カラスなど、沢山の名前がついている。名前の由来については、良く分からない。キワノ夜明やキワノ大島などは、何と無残にも、今では防波堤に踏み潰されている。釈迢空の「葛の花踏みしだかれて色あたらし」を真似た訳でもあるまいに。
県会議員の岩本一夫によれば、平島にはこんな話が伝わる。昔、柳島のしばきり徳衛門が、白壁の大きな家を建てた。これを大島から見た娘が、こんな家にお嫁に行きたいと願った。そして、念願かなって嫁いで来た。その時の持参金が姥島で、子供が平島だそうだ。ずいぶん沢山の子宝に恵まれた。
210821 均茶庵