まるで説明が要らないほど有名なコケだ。江戸城など、3か所で国の天然記念物の指定を受けている。「暗い洞窟で見ると、光が原糸体のレンズ状細胞の奥で反射して、エメラルド色に光る。」と、説明してある。実は、そんなに簡単ではない。相当大きな群落であれば、確かに薄ぼんやりと光って見えるが、疎らに生えている時や、ちょっと明るい場所では、全く分からない。それに、植物体も非常に小さい。
湯河原から箱根に抜ける椿ライン沿いにある、標高550mの湯河原町鍛冶屋ししどの窟が、県唯一の記録地となっている。(県RDB)凝灰岩の岩の窪みや、洞内に沢山並んでいる石仏の陰に生えているそうだが、残念ながら均茶庵は確認できていない。2018年11月にも、石窟内を丹念に調べてみたが、気配すらなかった。RDB発行以降は、新産地での生育が確認されていない。
ししどの窟のヒカリゴケは、古くから知られていたそうだが、正式に確認されたのは、1996年になる。(平岡, 2005)それからもう20年以上たっているし、消滅してしまった可能性がある。一時期、植生保護のため柵を作る話もあったらしいが、もうその必要もなくなったようだ。{未}
ヒカリゴケは、ルーペで一見すると、まるで苔類の様に見える。葉の下部が癒着しているし、中肋もない。蒴もなかなかつけない。家に持ち帰って顕微鏡で見て、「あ、違う。」と分かる。均茶庵が、長野県上高地の河童橋で、泥岩の壁の上に初めて見つけた時もそうだった。徳沢から明神に散歩している途中だった。蒴がついていたため、初めて見た時には、「あれ、苔類に蒴がある。」と驚いた。2014年7月だった。
上記事情により、写真は、上高地産を転用した。
【野口】 schisto裂けた stega蓋
【牧野】 G. schisto裂けた stegio包皮。植物全体を縁の切れ込んだ苞葉に見立てたものか
【e-Floras】 G. schistos, split or divided, and stego, cover, apparently alluding to erroneous observation that operculum splits
【Smith】 meaning split lid from the erroneous assumption that the capsule lid split
【Crum】The generic name is based on an erroneous observation that the operculum splits radially into toothlike sections.
【秋山】「schistos=裂けた+stegos=蓋」 側方がしばしば裂ける蘚帽を蘚蓋と誤認して,蓋がのちに裂開するの意味から
【田中】裂けるを意味するギリシャ語のschisto,蓋を意味するギリシャ語のstegosが 語源。さくの蓋が裂けると考えられていたことに由来する。
(作成: 181111)
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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