県RDBでは、国のRDBのカテゴリー外に、「注目種」を6種設けている。以下のように定義している。
注目種:『生息環境が特殊なもののうち、県内における衰退は目立たないが、環境悪化が生じた際には絶滅が危惧される種』
従って、一般的にはそれほど珍しいわけではない。但し、生育している場所が限られているため、どこでも見つかるという訳でもない。
フロウソウについては、均茶庵はあちらこちらで見ている。所が、標本箱を調べてみると、全て県外産だった。県内産の標本は、全てコウヤノマンネングサClimacium japonicumだった。この2種は、非常に似通っている。平凡社でも、『二次形の上部が真っすぐで曲がらない。』のがフロウソウで『二次形の上部が湾曲』するのがコウヤノマンネングサとしている。どちらも、湿地あるいは湿った草陰に生える。コウヤノマンネングサは、水中花にすると一年以上も持つので、均茶庵の机の上には、Daisoで買って来たガラスのポットが、いくつか並んでいる。
2010年に中国湖南省張家界(均茶庵には、昔の大庸市の方が馴染みがある名前だ。元々は、紀元前の秦帝国以前の大庸国だし、紅軍賀龍元帥の根拠地だった。)のお土産に採って来たフロウソウは、数年間均茶庵の目を楽しませてくれた。しかし、ちょっと油断した隙に、藻に負けてしまった。
① 箱根芦ノ湯阿字が池 標高850m {再確認}
2018年7月の、地上では35℃になろうとする日、箱根芦ノ湖に涼んだ。その帰り道、芦ノ湯阿字が池によった。嘗ては広大な池だったそうだが、今ではその大部分が駐車場になってしまった。一番奥の弁財天社から更に奥が、かろうじて嘗ての湿地の面影を残している。叢の中に、フロウソウの小さな群落があった。滅びを待っているような、可憐な姿だった。均茶庵の守り神弁天様には、必ずお賽銭を上げる事にしているが、その心を愛でてくれたのだろうか。
② 箱根仙石原イタリ湖 標高 685m {未}
何と、その日家に戻ってから県RDBを見てみると、フロウソウの産地としては、芦ノ湯と仙石原イタリ湖しか記載されていなかった。2006年以降に発表された論文も見てみたが、新たな生育地は報告されていなかった。尚、仙石原イタリ池は、箱根カントリークラブ内にあり、入場できない。
③ 箱根お玉が池 標高 750m {文献記録ナシ}
お玉が池は、箱根旧街道の石畳から県道732号を挟んで北側にある。上記①の阿字が池とは双子山を挟んで、ちょうど真南に当たる。南岸の池に面した土手と地上に、フロウソウの群落があった。2019年5月に確認した。ここには、六道地蔵・精進池へ行くハイキング道が通っているが、石畳旧街道に比べて人気がないため、人影は少ない。
阿字が池~お玉が池のちょうど中間には、標高850mの精進池があり、回廊のような形になっている。精進池を一周するハイキング道は、現在立ち入り禁止となっているため、中に入れない。従って、ここではフロウソウの生育を確認できていないが、可能性は十分あるものと思われる。 (Rev: 190528)
【野口】 階段状。新植物が一茎ずつ、次々にできてくる所。
【牧野】G. kimax階段。内縁歯に孔が沢山一列に並び階段様に見えるから。
【e-Floras】G. klimakion, small stair or ladder, alluding to broad perforations of endostome segments united by transverse tissue resembling rungs of ladder
【Smith】meaning staircase, referring to the appearance of the endostome processes.
【Crum】The name refers to broad perforations which give the endostome segments a ladderlike appearances
【秋山】「klimax=階段」 毎年仮軸分枝で伸びる地下茎の様子からか?
【田中】階段を意味するギリシャ語のklimaxが 語源。さく歯の形態に由来する。
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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作成: 180915