ホウオウゴケ属の中では、一番綺麗だと言って間違いないだろう。大きいだけではなく、植物体は左右の均整がとれている。通常の植物体は10cmくらいまでだが、最大20cmになると聞いた事がある。均茶庵は、未だそんな大きな株を見たことがない。日本中あちらこちらで見る。F.nobilisの名前が付く前は、F.japonicusと言われていた。しかし、そんなに一般的なコケなのに、神奈川県は、なぜ「注目種」に指定したのだろう。
答えは、RDBの中に書いてあった。「国内では珍しくないが、県内では生育範囲が限られており、その動向に注目が必要である。全国的には普通種であるが、県内では少ない。」RDBには、①~③しか記載されていない。改めて均茶庵の標本箱を見てみると、なるほど県内で採取した場所は限られている。報告地は、県内全般に亘っているが、確かに場所は多くない。何故なのだろう。山を歩く時には、ちょっと気を付けてみよう。
高木は、1977年に、『日本の代表的なコケ類』11種を選んだが、その中で「鳳凰という鳥の尾羽に似て優美である。・・・・大きさから言ってホウオウゴケ属中の圧巻である。」と言っている。
尚、ホウオウゴケとトサカゴケF.dubiusは、良く似ている。均茶庵は、葉の縁が暗いのが前者で、明るいのが後者と、単純に区別している。
① 湯河原鍛冶屋ししどの窟 450~510m {再確認}
伊豆に挙兵した源頼朝が、あえなく敗北し、一時山の中の洞窟に隠れたという伝承を持つ。水滴が洞窟の上から滴っており、湿度は十分に高い。
② 箱根須雲川 300~400m {再確認}
須雲川沿いの数地点から報告されている(佐々木, 2005)。均茶庵が採取したのは、記載された場所からちょっと離れた飛龍の滝からだ。この一帯に分布していると思われる。
③ 箱根神山噴気孔 1,390m {未}
火山情報発令のため、2015年6月から入山禁止となっている。
④ 小田原市入生田 (佐々木, 2009){未}
地区の一番西に位置する妙力寺に伸びる、吾性沢林道から報告されている。入生田のその他の場所では、記載されていない。
⑤ 逗子市神武寺 40~50m (小久保・他, 2013) {未}
駅からほんの近くにこんな閑静な場所があったのかと驚く。習性上どうしても小さなFissidens種に目が行ってしまい、後で「そう言えばあったかな。」と反省する。
⑥ 相模原市リニア新幹線計画地2地点 (JR東海アセス, 2014){未}
均茶庵は、詳しいアセス報告書を持っていないので、詳細は不明だ。
【野口】 fissi分れた dens歯。蒴歯
【牧野】 L. fissilis割れる dens歯。葉の基部の腹側な2枚に割れているため。
【e-Floras】 L. fissus, cleft, and dens, tooth, alluding to split peristome teeth
【Smith】meaning split tooth, referring to the peristome teeth
【Crum】The name refers to the peristome teeth, which are generally split into two divisions.
【秋山】「fiss=裂けた+dens=歯」 深く裂けた朔歯の様子から
【田中】ラテン語でfissは分裂する、densは 歯を意味する。さく歯の形態に由来する。
( 作成:190831)
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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