ここも「都」かと思ってしまうような東京の一番西の檜原村で、2010年8月に、ちょっとおどろおどろしいコケを見つけた。標高1,200mの都民の森に生えていた、大木の根元で採取した。パピラが沢山あり、ステレイドが腹背両側に見られ、何よりも、鋭い歯が並んでいる。多分、センボンゴケ科だろうと想像したものの、全く同定できなかった。「同定不明標本」の箱に納め、年に1~2回引っ張り出しては、あれやこれやと眺め直したものの、ついぞ分からない。
そして終に2015年5月に、岡山理科大学の西村先生のもとに駆け込んだ。やっとサジバオウゴンゴケと正体が分かった。オウゴンゴケには二種あり、本種とトサノオウゴンゴケL.flexifoliumとの違いは、後者が専ら石灰岩地に生育するのに対して、前者が非石灰質地の樹幹に見つかってており、又、葉縁の上部には密に鋸歯が生えているという点だ。しかし、区別は難しい。(西村, 1993)本種は、東京都では高尾山、奥多摩、青梅市など計5ケ所と比較的沢山報告されている。(堀, 2010)
知識が少し豊かになった所で、改めて「同定不明標本」の箱を開けて見た。特徴の表を調べると、2012年11月に、標高1,418mの丹沢加入動山頂上の大木の根元から採取した標本に似ている。どきどきしながら、顕微鏡で確認した。{文献記録ナシ}
神奈川県では、丹沢山山頂下の標高1,470m付近の樹幹から報告がある。(県RDB)丹沢山頂は、1,567mある。均茶庵は山頂のみやま山荘の周辺及び東からの登山口の天王寺尾根と堂平付近を探してみたが、残念ながら生育を確認できなかった。何分小さなコケなので、非常に目に付き難い。まだまだ見落としがあるのではないかと思う。{未}
神奈川県では、計2件の生育記録となった。
【野口】lepto薄い dontium歯。蒴歯の性状
【e-Floras】leptos, slender, and odontos, tooth, alluding to narrow peristome teeth
【Smith】meaningly slender tooth, referring to the peristome teeth.
【Crum】The generic name means slender teeth, in reference to the terete or filiform divisions of the peristome.
【田中】ギリシャ語でleptoは細い、odontは歯を意味する。
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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作成:180501