関西に行って杉の幹をみると、カタシロゴケはどこにでも生えている。「神奈川県では、絶滅危惧種です。」なんて言おうものなら、ほとんど笑われそうになる。
薄暗い杉林の中で、幹にびっしりとついている植物体は、他のコケを見かけないだけに、良く目立つ。そして、ルーペでのぞくと、葉の先端一面に、びっしりと無性芽がついている。年齢がすぐに分かってしまいそうだが、均茶庵が大好きな深キョンの乗ったドロンボメカが、ヤッターワンから出て来たゾロメカに取りつかれている姿を、どうしても思い出してしまう。この後お待ちかね、ドロンジョの服がボロボロになる。
さて、大雄山最乗寺には、カタシロゴケを始めとして、これでもかと言うほど神奈川県の絶滅危惧種が生育している。ちょっと薄暗いしかし荘厳な境内に参拝すればするほど、新しい発見がある。
① 南足柄市 大雄山最乗寺 標高350m {再確認}
県RDBに記載ある。お寺の説明は、割愛する。均茶庵は、2012年10月に最初に生育を確認してから、何度もお参りしている。2019年6月には、標高248mの十八丁目茶屋付近でも生育を確認した。てんぐのこみちと呼ばれる杉林にそった遊歩道の幹に、小さな塊が付いていた。境内の外では、この辺りまで生育領域が伸びているようだ。
② 箱根 元箱根神社 (標高 730m) {未}
均茶庵は何度も参拝しているが、残念ながら、未だ出会ったことがない。お賽銭が少ないのか、あるいは、信心が薄いのか、少々反省する必要がある。(県RDB)
③ 箱根 芦ノ湖西岸 (標高740m) {未}
芦ノ湖西岸の遊歩道に沿った杉の木の根元に生えているそうだが、(佐々木, 2011)均茶庵は未だ確認できていない。空気が綺麗な遊歩道で、湖と駒ケ岳に目を奪われてしまっているからだろうか。時々外人さんにも遇う。How are you doing? Good, and you?
④ 小田原 入生田 (標高 約100m) {未}
箱根登山鉄道入生田駅を少し上がった所から西に走る吾性沢林道は、鬱蒼とした杉林に囲まれている。杉の樹幹下部に旺盛に生育している由だが、(佐々木, 2009)残念ながら均茶庵は未だ出会っていない。
神奈川県では、以上の4ケ所で報告されている。
丹沢・大山山系は、ほとんど全山を覆うように杉が植林されている。ただ薄暗いだけで、景色も楽しめず、山を登る人にとってはまるで面白くない。しかし、こんなに杉林が多いのに、カタシロゴケをとんと見かけない。
【野口】syrrho下がった podon足。葉上方の小細胞群が葉縁にそって下に延びている。
【e-Floras】G. syrrepo, to close the eye, and odon, tooth, alluding to narrow, connivent, horizontal peristome teeth of some species closing capsule mouth upon drying
【Crum】The name refers to the somewhat horizontal or convergent nature of the teeth of the peristome, more or less closing the mouth of the capsule (in some species at least).
【秋山】「syrropos=輻輳(方々から寄り集まること)する+odon=歯」 蒴歯が水平に内曲 して蒴の口を覆い閉ざす様子から
【田中】syrrohoは垂れ下がった、podonは足を意味する。葉の形態に由来する。
1.コケここ 蘚類目次に戻る
{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
*写真の拡大は、PCの拡大機能を使ってください。
作成: 180715