先に、コハイヒモゴケM.buchananii subsp. helminthocladulum を紹介したが、ハイヒモゴケの近くに生育する事が多いようだ。似たような生育環境を好むのだろうか。この二種は、植物体の太さや粗さ及び葉の先端の形状が違うくらいで、ソバージュのような植物体が岩壁や灌木から垂れ下がり、そこに福禄寿の頭にそっくりな葉が瓦状につくのもまるで同じだ。神奈川県では非常に珍しいが、他県では、山地の渓流沿いに比較的普通に生育している。
① 南足柄市 大雄山最乗寺 標高350m (県RDB){再確認}
当寺の大書院脇にあるイヌガヤの大木から、コハイヒモゴケが塊になって懸垂している。この中にハイヒモゴケも混生しているとの事だ。均茶庵の手持ちの資料を再チェックしてみた所、全てコハイヒモゴケだった。RDBでは、県内唯一の生育地とされている。RDB発行の時点では、石碑の上にも、少量生えていたようだ。
光明池そばの樹幹に、生育を確認した。上記とは、3m程離れている。Rev. 200717
② 丹沢ゴーラ沢出合 標高約800m {文献記録ナシ}
2006年6月に採集した。ゴーラ沢の左岸が、檜洞丸へ登るツツジ新道のルートになっている。沢から山への取りつきにある枯れ木に少量懸垂していた。丁度、コハイヒモゴケが生えている沢の崖の反対側に当たる。しかし、この枯れ木は、いつの間にかなくなってしまった。
長らく「コハイヒモゴケだろう。」と気にもかけずに標本箱にしまっていたが、2010年のお正月の手持ち無沙汰の際に、半分お屠蘇酔いで、標本を顕微鏡でのぞいてみた。葉の先端が針のように長い。改めて植物体そのものを観察すると、成る程、別種だった。偶然の発見だ。
標本箱は、往々にして宝の山だ。時にはビックリするような種を、箱の中から見つけ出す事がある。山に登って実際に標本を採取するよりも、ラッキーな事が起こる。だから、天気が悪くてどこにも行けず、手持無沙汰で引き籠っている時など、適当に標本を選んで顕微鏡をのぞいてみる。とんでもないお宝が隠れているかもしれない。特に、DicranaceaeやPottiaceaeと同定していた標本が、一番怪しい。
当県における産地は、2ケ所となる。
【野口】高いところにある
【牧野】G. meteoron 星や宇宙の。子嚢の形が星形になるから。
【Meagher】meteoron, high in the air, clearly alluding to its dangling epiphytic habit
【秋山】「meteor=空中」 垂れ下がる様子から.
【田中】高いところにあるという意味。
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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作成:181015