タチゴケAtrichumは、NC州でもごく一般的で、山地や平地の至る所に生えている。均茶庵は、この標本がてっきりナミガタタチゴケA.undulatumと思い込んでいたので、特に気にも止めていなかった。しかし、帰国後、葉を切断してみると、断面がA.undulatumと明らかに異なっていた。こんな事なら、いくつも標本を採取しておけば良かったと悔やまれる。何しろ、NC滞在中は、ちゃんとした顕微鏡を持っていなかった。Crum先生の図鑑には、Atrichumとして4種が記載されている。
写真からもわかるように、薄板が4列しかなく、しかも、高さが数細胞止まりだ。ナミガタタチゴケに比べると、貧弱だ。葉背面の歯も殆ど無いか、又は少ない。
本邦産のチヂレタチゴケA. crispulumと名前が紛らわしいが、別の種だ。
参考までに、本邦産のAtrichum葉断面図を添付した。この内、Crum先生の図鑑に載っているのは、A. undulatum 1種のみだ。
080419B06 中部 Falls Lake Flat River (Durham) 水際の、日蔭の土上
044.1 Atrichum タチゴケ
【野口】 a 無 trichum毛。帽に毛がなし
【e-Flora】 a-, without, and trichos, hair, alluding to calyptra
【Smith】hairless, with reference to the glabrous calyptrae.
【Crum】So named because the calyptra is essentially hairless, in marked contrast to most members of the family.
【秋山】「a=無し+trichum=毛」 蘚帽に毛のないことから
【田中】ギリシャ語で aは存在しない、trichoは髪の毛を意味する。帽に毛がない事に由来する。
Crum先生の図版は、こちらへジャンプ: 1258 Atrichum crispum