非常に小さなコケで、まるで目立たない。植物体は5mm程しかなく、群落でなければ、まるで気が付かない。石灰岩質の土壌に生えるが、全国でも分布地が物凄く限られている。ダンダンゴケEucladium verticillatumも、神奈川県の特産種だが、一般的に石灰岩性地形が欠けている神奈川県に産出するのは、奇異だ。神奈川県以外では、千葉県、和歌山県、大分県、沖縄県などから報告されている。(田中, 2012)
神奈川県では、湿った海生の凝灰岩上に、生育がほぼ限られている。従って、ダンダンゴケの群落の近くに、ちんまりと生えている事が多い。鎌倉市、横浜市及びそれに接する逗子市神武寺(小久保・他, 2013)のみから報告されている。ダンダンゴケは、三浦半島全体から報告されているが、フガゴケの生育場所は更に狭い。(河済、佐々木など, 2005)
鎌倉の朝比奈切通しで、均茶庵は2012年及び2013年に採取した。ダンダンゴケの群落の周囲に少々色が変わっている部分があったので、ルーペでのぞいたのがきっかけだった。植物体が小さくて、現場では良く分からなかったが、家に持ち帰り顕微鏡でのぞいてみて、初めてその団扇のような姿を見つけた。うっかりすると、見過ごしてしまう。
その後、機会有るごとに切通しに行ってみるが、どういう訳か、まるで見つからない。絶滅したわけではないだろうが、生育密度は相当に減っているようだ。あるいは、ダンダンゴケの勢いが未だ強くない春先にのみ見られるのかも知れない。均茶庵が採集したのは、二回共3月だった。ダンダンゴケの方は、壁面を埋め尽くすように、密生している。尚、横浜自然観察の森で、均茶庵はダンダンゴケを採取しているが、これまでここでフガゴケには会った事がない。
採取してから写真を撮るまで時間が経ってしまったので、画像がどうしても綺麗に映らない。植物にこびりついた白い石灰岩の塊を落とすだけで、エネルギーを割いてしまった。写真が不鮮明となってしまったが、ご容赦いただきたい。
【e-Flora】 Genus Gymnostomum and L. -ella, diminutive
【Crum】The name is a diminutive for Gymnostomum, a genus of some similarity in appearance.
参考 087.9 Gymnostomum ハナシゴケ
【野口】 gymno裸の stomum口。蒴歯がない。
【e-Floras】 G. gymnos, nude, and stome, mouth, alluding to lack of peristome
【Smith】meaning naked mouth, referring to the absence of peristome teeth.
【Crum】The name refers to the naked mouth of the capsule, i.e. to the absence of a peristome.
【秋山】「gymnos=裸+stoma=口」 朔歯が無いことから
【田中】gimnoは裸、stomumは口を意味する。さく歯がないことに由来する。
壁面での生育状態
植物体
葉の顕微鏡写真
分布図
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{文献記録ナシ} 均茶庵が生育を確認。文献記録が見当たらない。
{再確認} 均茶庵が生育を確認。文献記録あり。
{未} 均茶庵は生育を確認できていないが、文献記録あり。
*引用文献及び略語については、「コケの参考書」をご覧ください。
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