均茶庵の世界
比較的新しいさすらいの物語です。
ご一緒したべんてんが、いつも旅の安全を守ってくれました。
均茶庵は、さすらいの旅行が大好きだ。国内・海外を問わず、暇が有れば足を延ばしている。勿論、30~40日間の一人旅が得意だ。正しくは、「同行二人」だが、ご一緒するのは弘法大師ではなく、べんてんだ。
所が、この10年間は、同行二人の相手が変わってしまった。歳を経ると体力よりも気力が落ちる。結果として、同行の相手がのぶえちゃんになってしまい、専ら阪急Trapicsの1週間~10日間のパックツアーにお世話になる。「バック」の三文字が消えて、パックだけになってしまった。しかも、行き先は僕の好みからどんどん離れて、欧州が圧倒的に多くなる。ちなみにこの頃は、こんな所に行っている。一人知らない土地をのんびりなんて、もう大昔の話になってしまった。リストを見ていると、老いを感じる。
2010年 中国(湖南・広東・江蘇) 30日間
2011年 中国(四川・江南) 30日間
Trapics イタリア
2012年 Trapics スペイン
Trapics 中国(遼寧、福建、山東)
2014年 アルゼンチン・チリ 40日間
2015年 Club Tourism ギリシア(エーゲ海)
2016年 Trapics 中国(広西チワン、貴州)
Trapics トルコ
2017年 Trapics クロアチアと周辺
2018年 Trapics スイス
そんなわけで、今年2018年は6月にスイス8日間の旅をした。MatterhornやMont BlancやJungfrauなどの雪山と氷河の景色を楽しみながら、一方の頭の中は高山病でただただ空っぽになっている。景色のすばらしさよりも、この恍惚感の方が、均茶庵にとっては至極の歓びだろうか。瘋癲の心だ。
そして、Mont Blancを望むLe Brevent展望台で、大変なものを見つけた。展望台の石の階段や基壇の隙間に、ミヤマヤリカツギEncalypta rhaptocarpaが生えていた。帽の下端が全縁だ(スキー帽子のプリムような感じ)。より一般的なヤリカツギE.ciliataは、帽の下端が細かく裂けている。(マーメイド・スカートの裾のような感じ)
Encalyptaは、日本では、日本アルプスを中心とした限られた場所にしか生えていないコケだ。とりわけ、E.rhaptocarpaは、絶Iに指定されている。ここは2,524mある。至福の瘋癲は、突然ギラギラと輝く眼に変わってしまった。思わず、下手な一句が出た。
注)帽: コケの蒴(胞子嚢)を保護している覆い。長さは、約1mm。
アルプスのルブラバンの石垣のエンカリプタの帽に震える 均茶庵
アルプスでコケの採取が許されているのかどうか、知らない。しかし、小さな株をそっと紙に包んだ。高山植物を沢山のハイカーたちが踏みつけているし、綺麗な花は放牧の牛が食べている。多分、きっと・・・、コケは問題ないだろうと、好意的に解釈した。ガイドさんが睨んでる。仕方ない、気が付かないフリ。のぶえちゃんが、視線の間に立った。
海外のコケは、日本へ持ち帰っても、ほとんど同定できない。属レベルまで判れば、まあ成功だ。2014年にパタゴニアに遊んだ時も、標本を幾つか持ち帰ってみた。Catalogo de Musgos de la Region FueginaやMOBOT(Missouri Botanical Garden)のA Checklist of the Mosses of Chileなどを参照しながら、七転八倒した。
旅行はもう日程の最後になっていた。ツアーの合間を見て、すばやく何とか23個を持ち帰った。さて、いくつ同定できるものか。2013年に購入したMichael LuthさんのBildatlas der Moose Deutschlands が手元にあるから、暫く睨めっこしてみよう。尚、不思議なことに、苔類とツノゴケ類を旅行中全く見かけなかった。
注)Mont Blancは、フランスとイタリアに跨る山だそうだ。行くまでは、てっきりスイスの山だと思っていた。Le Brevent展望台も、正しくはフランス領になる。スイス側から仏領シャモニーに入る時に、入国審査がないため、帰国するまでスイス領だと思っていた
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作成:181003