過日広島から呉線で忠海に帰ったときに、登山服姿の中高年のメンバーと同じ車両になった。最近は山歩きをするグループが忠海の黒滝山・白滝山にも多く訪れるので、これはきっと忠海に来るのだなと思っていると大乗駅で下車した。はてどこに行くのだろうと気になっていたら、『中国新聞』の2015年5月17日の「松島宏ちゅうごく山歩き」に烏帽子形山・平家山が紹介されていた。この文章を読むと大乗駅で降りたグループがこの記事をもとに山歩きを計画したのだなと納得した。そこでこの文章を紹介しよう。
「瀬戸内海沿いの里山は少し登るだけで内海の眺めが素晴らしい。竹原市忠海の黒滝山・白滝山は有名で多くの人が訪れる。そのすぐ西に位置する烏帽子形山(343メートル)と平家山(382・6メートル)。訪れる人は少ないが、登山道が整備された縦走コースだ。JR呉線大乗駅から烏帽子形山に登り平家山に縦走、忠海駅に下りるコースを紹介する。大乗駅から東に300メートル進み、踏切を渡りすぐに右折して車道を進む。自治会館の前を通り、次の分岐は右に進む。稲生社を過ぎ、車道が傾斜を増して峠にたどり着く。 大クスノキから山道に入る。標識はない。送電線の下を通過し右に果樹園を見ながら登ると尾根に出るここで初めて烏帽子形山の標識が現れる。標識150メートルの岩場から瀬戸内海の眺めがよくなり、竹原火力発電所や阿波島、大崎上島、大三島が眼下に広がる。 標高280メートルの展望岩に向かう。岩場の多い尾根を通り抜ける道と、右の斜面を遠回りする道と二つあるが、どちらからでも行ける。展望岩からの眺めは絶景だ。頂上には送電線鉄塔があり、こちらも眺めがいい。北東に下り、いったん谷に下り東に登り返した尾根が平家山への登路だ。小ピークを二つ越え、鞍部を登っていくと小泉向原への分岐があり、やがて鉄塔に着く。眺めを楽しもう。
100メートル進むと平家の滝への分岐がある。ここから標高差100メートルの往復で滝を見ることができる。往復1時間だ。分岐から頂上はもう100メートル。三角点があるが眺望はない。すぐ南の展望岩からの眺めは最高だ。東平家山を過ぎ尾根を南に下っていき鞍部へ。さらに進むと、次のピークが歓喜山と滝の観音の分岐だ。観音山へ向かい、鉄塔を通過し、頂上の北斜面を横切って尾根を下ると忠海床浦に出る。1キロ車道を歩くと忠海駅だ。所要時間3時間50分。」
この文章を書いたのは松島宏広島登山研究所代表だが、『ちゅうごく山歩き』は中国新聞社から本になって書店で販売されているのでぜひ手に取ってみて欲しい。そのvol4の5ページにこの文章が再録されている。
黒滝山を愛する会でも平家山登山を計画したが、ぜひここに紹介されている逆コースすなわち忠海駅を出発して大乗駅へ下るコースを試してみてはいかがだろうか。
併せて1977年に刊行された大乗小学校創立百周年新築落成記念事業実行委員会編集『大乗百年史』第一章「大乗地域の自然環境」地勢の中で大乗の山岳について書かれているので紹介しよう。
「地勢 大乗地域の北側は平均高度242メートルの山々が東西にわたり、竹原町に接するところより南走して、海岸にせまって絶壁をなしている。その絶壁の下を海岸に沿って、国道185号線が東西に走っている。南側は瀬戸内海に臨み、沿岸は東部より中部にわたって埋め立てられて、電源開発竹原火力発電所、津田木材、協和木工が並び一工業地帯をなしている。かつての、春の潮干狩りで賑わった広々とした砂浜も、夏の海水浴場としての白い砂浜も、広島大学付属小学校の松並木の臨海学校も、今はその姿を消している。 海上南方に大久野島、小久野島が点在し、その背後に愛媛県越智郡の島山を臨んでおり、南西には阿波島が、高崎南端より655メートル余をへだてて横たわっており、その南端付近は天然記念物スナメリクジラの回遊海面として有名である。
山岳 高山179・6メートル 竜王山188・5メートル 向石地蔵山237・2メートル 烏帽子形山351メートル 御堂丸(平家山)382・8メートル 鎮ケ山203・9メートル 内ケ原山262・4メートル 畑ケ奥173メートル」(『大乗百年史』P1)