黒滝山に33体の観音石仏があるのをご存知でしょうか。この33体の石仏を一つ一つ丹念に撮影された『石仏の道』と題する写真集が村上初一さんの手によって発刊されました。その前書きから抜粋してみます。
「JR呉線で忠海駅に降りると正面に、町並みを抱くようにして盛り上がった黒滝山が目に映る。頂上まで約40分、途中山裾に『霊厳山』の額が上がっている 地蔵院がある。参道を登りつめると、石仏の小道がつづく黒滝山登山口にさしかかる。 山は、三条の岩場からなっており、この山腹、山嶺の岩肌に観音像(文 政4年=1821年完成『忠海歴史年表』)が彫られて、『ミニ西国三十三カ所霊場』をなし、古くから信仰の山として知られてきた。 元々西国観音霊場の始 まりは、65代花山天皇(およそ千年前)が落飾し法名を「入覚」と号し、永延2(988)年3月15日、紀州熊野山に参拝のみぎり、権現のお告げを受け て、河内国石川寺の仏眼上人を先達として西国33カ所観音霊場の巡礼を修業されたことによる。(『仏像古書』より) 黒滝山のこれら磨崖仏は、1メートルほどの坐像、立像で、三十三カ所それぞれの霊場の本尊像である。風化のすすむ永い歳月をじっと耐え、やさしく衆生に語 りかけ、歴史の流れと信仰の厚かった時代が偲ばれる。この石仏の道を全部巡るには、ゆうに3時間はかかる。」
この文章でも明らかなように、この33石仏は、西国33カ所の巡礼を黒滝山一山で成し遂げることができるように作られており、それぞれの観音像に付された番号は西国33カ所の札所と同一の寺と本尊を表しています。