呉レンガ建造物研究会の理事である橋本秀夫氏が広島県内の明治の文化遺産を訪ねた『広島レンガ建築探訪記』という本が刊行されている。 その中に忠海芸予重砲兵大隊沿革史が掲載されているので抜粋してみよう。
１８８６（明治１９）年
第二海軍区呉鎮守府、軍港を呉におく。
１８９０（明治２３）年
呉憲兵隊忠海分遣隊事務を開始。
１８９３（明治２６）年
広島湾を中心とする芸予海峡砲台建設費１５００万円－１０年継続事業建設閣議決定
１８９４（明治２７）年
芸予砲兵大隊設立用地（練兵場、射撃場、演習砲台設置、司令部、兵営設置）のため二窓地区（僧都新開、榎迫、柿ノ木、冠崎、遊ケ原、桜町）田畑を多く譲渡す。
１８９６（明治２９）年
忠海陸軍砲兵隊用第二波止場完成。
１８９８（明治３１）年
忠海芸予重砲兵大隊、小泉峠を開削し、榎迫射撃場を整備。東側に弾丸除け高山を築く。
１８９９（明治３２）年
芸予要塞砲兵大隊、宇品仮営舎より忠海新営舎に移転忠海芸予重砲兵大隊設立
１９００（明治３３）年
忠海冠崎演習砲台配備芸予要塞司令部を忠海に開設
１９０１（明治３４）年
芸予要塞砲兵大隊観兵式
１９０３（明治３６）年
忠海衛戌病院に軍医３名常勤
１９０４（明治３７）年
広島湾要塞、芸予要塞の防備完了
芸予要塞大久野島２８榴弾砲を旅順攻撃に急送
１９０６（明治３９）年
特命検閲使乃木希典将軍忠海芸予要塞司令部検閲
１９０７（明治４０）年
３月の連合大演習の結果「芸予要塞不要論」発生
１９１８（大正 ７）年
芸予重砲兵大隊廃止
１９１９（大正 ８）年
忠海電信独立第二独立大隊設立
１９２４（大正１３）年
芸予要塞司令部廃止。広島陸軍兵器支廠忠海兵器庫を設置。大久野島は軍縮のため備砲撤去。要塞地帯から除外する。
１９２７（昭和 ２）年
大久野島、東京陸軍第二造兵廠忠海製造所となる。
ここに出てくる芸予重砲兵大隊本部は、現在のアトム株式会社の事務所で、兵舎も残っていて現在アトムの倉庫として使われている。またかつて炊事場井戸は今 でも残っていて清水がわき出ている。 この年表にもあるように、芸予重砲兵大隊撤退後は、この場所は兵器庫となり、大久野島で製造された毒ガスも貯蔵されていた。一方、大久野島は毒ガス工場 となるのである。
ちなみに、広島県教育委員会が、１９９６（平成８）年から９７（平成９）年にかけて行った広島県近代化遺産（建造物等）総合調査の報告書が『広島県の近代 化遺産』という本として１９９８（平成１０）年に刊行されている。その調査報告書の中に掲載されている忠海町の近代化遺産建造物をここに列挙してみよう。