何年か前の天神夜市で『エデンの海』を上映した。実際に忠海でロケをした映画なので、昔懐かしい風景がたくさん出てくるし、当時ロケに参加した人もいて、大変好評だった。
この映画『エデンの海』について調べるために、竹原書院図書館に行くと、館長さんが他の図書館にあたってくれて、昭和25年(1950年)の雑誌『キネマ旬報』のコピーをいただいた。その中から当時のこの映画ついての解説と双葉十三郎という映画評論家の批評を抜粋する。
≪解説≫
若杉慧の原作を、「美貌の顔役」の植草圭之助が脚色して、「栄光への道」「春の潮」などの中村登が監督している。製作は「破れ太鼓」「栄光への道」の小倉 浩一郎である。これは、かつて角梨枝子主演で薔薇座で上演。角梨枝子の映画界入りのきっかけを作ったものであったが、映画では「春雪」でデビューした藤田 泰子が主演し、「栄光への道」「童貞」などの鶴田浩二がつき合い、その他、大日方傳、加藤嘉、高橋豊子、毛利菊枝、文谷千代子などが、それぞれ主な役で助 演している。
≪批評≫
中村登の演出は、まことに手堅い。その手堅さまじめさは好意がもてるが、その結果、味も素気も面白くもおかしくもなくなっているのは困る。多少は新鮮な場 面もあるが、全体としてあまり感興をそそらないのである。ともかくこの種作品はすでに食傷気味だから、もうつくらないほうが無事であろう。 と、なかなか辛辣な批評がなされている。 その後、『エデンの海』は吉永小百合主演で映画化されたが、ロケ地は忠海ではなかった。 わたしたちにとって、この映画が他の作品と変えがたいのは、この映画のもとになる若杉慧の『エデンの海』が実際に忠海をモデルにして書かれ、この映画が忠 海でロケされているために、当時の忠海を彷彿させる場面や風景にたくさん出会い、「良き時代の忠海」に出会うことができるからであろう。
※ 『忠海再発見2』で『エデンの海』がその後映画化されたのは吉永 小百合主演と書きましたが、和泉雅子主演の誤りでした。おわびして 訂正いたします。なお、さらにその後、山口百恵主演で製作されたこ とも付け加えておきます。