今年の正月も黒滝山の元旦登拝で掛場の獅子舞が上演されました。
この獅子舞は、約250年前にお隣の愛媛県から忠海に伝わったものだと言われています。昔から忠海町内で秋祭りを主として町内をにぎわしていたようです。 昭和の時代にはいってから、特に盛んになり、忠海と竹原の合併祝賀行事や呉のみなと祭り等にも参加し披露したこともあります。
最近では「海と島との博覧会」や大阪千里が丘の毎日放送のスタジオに竹原市郷土民俗芸能を代表して出演し大好評を博しました。
掛場の獅子は男獅子です。テレビ等で全国の獅子舞が放映されますが、大抵の場合、金銀赤白と綺麗に化粧をされた女獅子です。
男獅子は、頭の真ん中に角があり、顔一面真っ黒に近い紺色で一段と鋭い大きな目玉と獅子特有の大きな鼻で質素でありますが、このような男獅子は数少なく珍しい存在です。
男獅子ですから、舞そのものは勇壮活発なものです。 「旧舞」といわれる舞は、獅子が餌を求めて山から里におりて来る。満腹となった時点で昼寝をする。やがて太鼓の音に目を覚まして起き上がり大きな背伸び等 をして、楽しい太鼓のリズムにあわせて悦んで踊るといった舞です。
今年の元旦に久しぶりに披露された「新舞」は、金鼓流五段返しの立五段といいます。これは昭和の初期に松山市から伝授して今日まで保存しているものです。 獅子舞の本場松山市では獅子舞の競演大会がおこなわれており、そこで2回も優勝した日本一の獅子舞です。舞は「旧舞」同様男獅子の舞なので勇壮活発で次々 と操作が変わり、舞手の力量が発揮される舞です。特に「獅子の背返り」の演技は、前と後ろの舞手の意気が一致しないとうまくいきません。
掛場の獅子舞の保存については、黒滝山を愛する会の若い人も練習し、忠海の文化財として地元の人と一緒になって残して行こうと取り組まれています。
(元旦登拝での獅子舞の解説として西原久男氏が書いた文章から引用させていただきました)
なお、忠海には他にも登町や松原町に獅子舞があり、しばらく前までは舞われていたそうです。ちなみに、これらの獅子は女獅子であるということも付記しておきます。