広島の古本屋で昭和53年発行の坂本正夫著『広島県植物天然記念物』(佐々木印刷)という本を見つけた。この中に忠海八幡神社社叢と宮床神社のウバメガシ樹叢について書かれているので紹介しよう。
なお坂本正夫先生については、この「忠海再発見90黒滝山の植物」でも紹介した。
忠海八幡神社社叢。昭和11年9月3日国天然記念物に指定。「この社叢は群落生態学上一つの単位として貴重なモッコク群叢を形成する。最大なものは目通り周囲1.9m、モッコクでは県下第二位の巨樹。
境内に入ると、大きなクロマツが亭々と高く伸び、おおいかぶさるように生えている。
随分大きな八幡神社である。石段の傾斜がゆるく登りやすくしてある。社殿の周囲の樹木で一番目につくものはクスの大木と、モッコクの大きい木が非常に沢山あることである。
私は社殿の右側から裏にかけて、周囲の樹木を目ぼしいものは殆どその大きさを測定したが、これに2時間半余りかかり、終えたのは、丁度12時であった。
クスは拝殿の前後に大木がある。大きいのは5.80mある。随分太いものであるが、4.80mのと共に斜になっている。
モッコクは、主に社殿の右側に沢山生え、ここの社叢を特徴づけている。昭和11年の指定当時は大きなものは、1.9mあったとの事だが、それは今までに枯れたのだと思う。
そのようなものは見られず、殆どが1m前後で、1.40mのが一番太かった。
ムクノキの太いのが、あちこちにあって、太いもので、2.70m、クロマツは、石段の左右にあり、太いもので、3.50mあった。
社叢内の植物は次のようであった。
双子葉植物
合弁花群
キク科 ダンドボロギク、センダングサ、オオアレチノギク、オニタビラコ、アメリカ センダングサ
ウリ科 カラスウリ
ナス科 センナリホウズキ
シソ科 トウバナ
ムラサキ科 キュウリグサ
キョウチクトウ科 テイカカズラ
ヤブコウジ科 ヤブコウジ
離弁花群
ミズキ科 アオキ
グミ科 アキグミ、ナワシログミ
イイギリ科 クスドイゲ
ツバキ科 モッコク、ツバキ、サカキ、ヒサカキ
ニシキギ科 マサキ
ウルシ科 ヤマハゼ
モチノキ科 ナナミノキ
マメ科 ハリエンジュ、シロツメクサ
パラ科 ナワシロイチゴ
クスノキ科 クス
ナデシコ科 ウシハコベ
ニレ科 ムクノキ、エノキ
単子葉植物
ユリ科 リュウノヒゲ
イネ科 メタゲ、チヂミザサ、オカメザサ
ツユクサ科 ツユクサ
裸子植物
クロマツ、スギ、モミ
羊歯植物
ベニシダ、ワラビ、オニヤブソテツ
(坂本正夫『広島県植物天然記念物』P155~158)