明治維新で活躍した志士のなかに、忠海出身で池田徳太郎という人がいました。その事績について、『豊田郡誌』『忠海案内』に詳しく記載されていますので、ここに抜粋してみましょう。
池田徳太郎は、天保２年（１８３１年）に忠海町医池田元琳の長子として生まれました。幼くして神童と呼ばれ、８歳にして入野村の清田黄裳の塾に学び、１１ 歳から豊前中津の常藤頼母に師事、さらに１５歳からは豊後の広瀬淡窓の門に入り、筑前の亀井革卿の塾を訪れ、試しに『論語』を講じて認められ、塾長となっ ています。
１９歳で帰郷し、病死した黄裳にかわって清田塾を運営し、さらに須波の曹洞宗能満寺に山籠りして読書修養に励むかたわら学生を教えていたその頃、浦賀にペ リー、長崎にプチャーチンが来航し、徳太郎は江戸遊学の志をたてます。そして安政元年（１８５４年）江戸に上り昌平黌にはいり、さらに安政４年（１８５８ 年）麹町に塾を開き、お玉が池の清川八郎の道場に通います。この頃安政の大獄により吉田松陰、頼三樹三郎が処刑され、徳太郎は大いに憤慨しています。
文久元年（１８６１年）、清川八郎、伊牟田尚平、樋渡清明、山岡鉄太郎、北有馬太郎、笠井伊蔵等と会して尊王攘夷の挙にでることを決しましたが、幕府の偵 察が厳しく、清川八郎が無頼漢を斬ったことを口実に逮捕投獄されます。獄中でも「匹夫の身を以て云々の大事を謀るは不届の至りなり」として徳太郎に対する 吟味は特に厳しかったのですが、徳太郎は死を覚悟して同志を救うことに苦心しました。しかし、獄中不衛生のため多くの同志が病死し、徳太郎も瀕死の大病を 患いましたが九死に一生を得ます。
文久２年（１８６２年）、坂下門外の変がおこり、これを契機に幕府の方針が変わり、国事犯人赦免がなされ、徳太郎も放免されます。これより先、徳太郎は国 事のため囚われた志士の大赦と浪士募集の運動を展開します。幕府も当時、浪士鎮圧は困難なため、将軍家茂上洛を理由に浪士を集めてその懐柔策にあてようと します。浪士募集には清川八郎、山岡鉄太郎とともに徳太郎も尽力します。この浪士の組織がのちに新撰組となりますが、徳太郎はこの時点で、幕府の力では変 革は無理と判断して同志と袂を分かち帰省します。
その後、再び上京して、滞京の芸藩志士を訪ね事を共にすることを盟約し、元治元年（１８６４年）には芸藩に属し、藩の重要事件に関し密使として活躍、慶応 ３年（１８６７年）１１月には、御手洗において薩長芸の会盟が行われ、徳太郎がこれにあたり、翌年９月には芸藩の植田乙次郎と薩藩の大久保一蔵及び大山格 之助が山口に会し、連合出兵の密約が成立しました。 この年７月には倒幕軍の参謀として芸州兵を率いて出征しましたが、途中関門海峡で一隻が外国船と衝突 して沈没したため、別船を仕立てて芸州兵を乗せ、曳航して隠岐まで来たが航行困難となり、出雲美保関より陸路を進んだため主要な戦役には加わることができ ませんでした。
戊辰戦争終了後は、知事として下総常陸の管轄を命ぜられ、さらに若森県権知事、新治県権令、島根県権令、岩手県参事、青森県権令を歴任して明治７年（１８７４年）４４歳で病没しました。
激動の時代を変革を求めて生きた人物、池田徳太郎の顕彰碑は八幡神社境内にあります。