5 月
5日端午の節句、粽菖蒲の御酒神に供え、内祝いし、礼を致し合う。この日菖蒲に栴檀を添え神に供えまた軒に葺く。男子ある家には4月の頃より門に幟を立 て、槍長刀等の作り物を飾る。田植えの義代師(田を鋤いたりかいたりする者)早乙女打ち混じり、植エテ出マシヨヤ手ニモツ苗ヲという田植歌を謡い、サンバ サマヘ上ルと言って葉包みの飯(人々これを戴けば夏病みをせずと言って乞うもあり贈り遣わすもあり)と御酒を供える。田作りは百姓第一の業なれば賑々しく 祝い植える。しかし田方少なく小百姓の村のため格別の式はない。田方の植え付けがすむと地蔵院にて虫送り祈祷(僧侶が読経し鉦太鼓にて送り、磯辺にて施餓 鬼する。祈祷の札を家並みへ配り各々田畠へ立てる)を執行する。
6 月
7日14日祇園祭り、この両日は若者が神輿を守り奉じて町内を廻る。よって家並み掃除をして神輿を待つ。
築地の社を旅殿として7日に御幸し、14日に還御する。
17日夜厳島大明神祭日、築地の社へ参詣する。この夜明神様への献灯として大竿を用いて高々と灯燈を上げる。
28日夜住吉明神祭日、船主たち船霊祭りと言って新地住吉社の道々の浜側へ灯燈や行灯等出し賑わう。
7 月
1日例年堀の水を渫える。家並み一人ずつ出てこれを勤める。7日節句井替え、百姓牛を海に遊ばす。七夕祭りの式はなし。
近年手習子七夕祭りをする。盆の式、13日までを節季取引の際とし、14日盆の式に移る。
中元盂蘭盆等寺参り、墓参りをし、家々に精霊棚を飾り、先祖を祭る。
14日夜より16日まで3夜踊りあり。中央に床机を置き、音頭三弦太鼓にて囃す。ひとつ拍子の廻り踊りなり。客は遊女等を連れるもあり、身上がりをして踊 りにでるもあり、昔よりのならわしにて町中の男女打ち混じり、思い思いに手引き袖引きさざめき歩くを若き者の楽しみとす。
市の式、市入日数20日の間築地弁財天祭礼にて御免市が立ち、芝居見世物興行等行う。
市入りに八幡宮御幸あり、市上りに還御あり。
8 月
1日田実節句、この日米の粉で人形を拵える。14日より15日産神八幡宮祭日、社参内祝いする。
9 月
9日重陽、菊の御酒を神に供え、社参内祝いする。
14日塩浜明神祭日、浜師寄り祭りを営む。築地の社において殿様祭りと唱えながら武運長久・五穀成就の神楽を上げる。
1 0 月
亥の日、小童集まり亥の子を搗くと言って縄で五輪石をしばり引き縄をつけて町中を搗き歩く。西に1つ、東に1つ、昔より荒神堂筋を境にして東西を分け、互いに境に出て搗き競う勝負を争うを小童遊びの楽しみとする。20日胡祭り、町々の小祠へ灯燈を上げ祭る。
1 2 月
26日は正月用の品を交易する忠海市が開かれ、本町を市場として定め、近在の者、島方、町中の者等集まり便利にまかせ売り買いするありさま心いそいそと賑やかである。大晦日夜限り節季の取引をする。昔は氏宮の一番太鼓を限りに取引したと言い伝えられている。