『トモスイ』(高城のぶ子)
文芸誌「新潮」6月号に掲載されている川端康成文学賞受賞作で、わずか6ページ(原稿用紙で18枚だそうです)の短編ですが、なんともすごい小説です。
通常の男女の露骨なからみなど全然出てこないのだけれど、そんなのよりずっと濃厚なエロティシズムを孕んでいて、たった6ページを読んだだけなのに、ものすごいシーンを見てしまった!みたいな密度の濃い読後感があります。
なんと言いましょうか、北斎の描いた漁師の妻の夢のような、と言っちゃったらヤバイかなぁ(笑)。いやもう、これは読んでもらうしかない。でも私が薦めたとは言わないよーに。
ダブルファンタジーのときも同じせりふを吐いたけれど、読むならママに内緒でお読み、と言っておきましょうか。でもこちらは劇画風のシーンが出てくるわけではありません。
いわば抽象度の高いポルノグラフィですから、”感じる”には想像力が必要。そいつを使うと作品の核にひそむ毒がどろりと溶け出してきます。それはたまらなく美味なる毒であります。
blog 20100529