「天国はまだ遠い」(濱口竜介監督) 2016
30分の短編ですが、これはとても楽しい、面白い映画でした。これだけ登場人物が少ない上に一人のセリフが多く長い作品では一人一人の役者の実力、魅力が作品を左右してしまうところがあるんだろうな、と素人ながら思いますが、3人の登場人物はなかなかよくて、とりわけ主役の男性は素のままの男性であるときも、少女に憑依されたときの微妙に変わる表情や語りも、まさにこういう役柄そのものになりきったような存在感があって感心しました。
AVビデオの編集か何かの作業をやっていて、途中で電話を受けたりする男性の脇で、こちらを向いて知らん顔でつまらなそうに座っている少女、なんだろう?とみていたら、仕事を終えた男性がシャワーを浴びて自涜しているらしいシーンでも、なんかつまらなそうにこっちの方を向いてただ座っている少女、そのへんでやっと、あ、これは・・・と薄々気づき、彼女の妹がやってきて男性と話すのを、覗き込むようにして間に割り込んで坐りなおすところで、ようやく明確な「証拠」をつかんで、これは大林宣彦監督の「ふたり」だな、と思ったのでした。
それは終わりまで見ても印象として変わりませんでしたが、妹と彼、いや彼女が会話していくうちに、こちらもほろっとしてきました。「ふたり」は私が一番、と言っていいくらい好きな日本映画なので、濱口監督が濱口流のミニ「ふたり」を撮ってこんな素敵な掌編を提供してくれたことを大変うれしく思いました。
Blog 2018-10-14