ドライヴ(ニコラス・ウィンディング・レフン監督。2011年、米国映画)
カンヌで監督賞を受賞した作品らしいけれど、見ていませんでした。これは素敵な作品でした。
アメリカ西海岸の町の自動車修理工にして、映画のカーチェイスなんかのスタントマンもアルバイトでやっている運転の超技術を持つ青年が、実は強盗の逃がし屋もやっていて、冒頭のシーンはそこから始まるのでスリル満点。
この青年がどこからやってきて、どんな生い立ちで、なぜこうなっているか、なんてことは最後まで明かされないままで、名前さえよくわからない。「ドライヴ」で通しちゃっているんじゃなかったかな。
物語は同じアパートの同じ階に暮らすアイリーンという子持ちで夫が刑務所ぐらしというたまらなく魅力的な女性と彼がエレベーターで出会うところから実質的に始まります。
二人は自然に惹かれ合い、青年は彼女の息子も可愛がり、なつかれもします。ところが思わず早く彼女の夫が刑務所から帰ってきます。この男が悪い筋の借金をしていて、それを帰さないと妻子を殺される、というので、青年はこの旦那を援けるために再び強盗の逃がし屋を引き受けます。バックで糸を引いていたのは青年と裏社会をつなぐ役割の自動車修理工場のシャノンもよく知っているニーノやバーニーという悪で、実はその質屋にマフィアの大金があることを知った彼らが、青年や夫の男にその金を盗ませてマフィアの目を自分たちからそらして金だけとろうと謀ったわけですね。
それを知らずに夫の男と青年と、悪のつけた女のメンバーと3人で質屋を襲い、女が先に車に戻り、夫は戻ろうとして店員に銃で撃たれて死んでしまいます。大金の入ったカバンだけ車に乗せて女と逃げる青年を追う悪たち。それを青年の運転で振り切って隠れ家へ落ち着くものの、女が携帯で悪に知らせ、手下たちが銃を持って襲ってきて、女は撃たれて死に、青年は辛くも襲撃者を反撃して命長らえます。仲介役だったシャノンにも逃げるように伝えますが、シャノンもバーニーに殺されます。
残された未亡人と子供を襲うニーノ&バーニーの刺客をエレベーターの中で反撃し、やつの頭を踏み砕いて殺す青年を見て、未亡人の女性は恐怖の表情で、引いてしまいます。青年はニーノをやっつけ、最後の決着をつけるため、バーニーに電話で金を渡すから妻子に手を出すな、と言って死も覚悟して約束の店に出かけ、バーニーに車のトランクに入れてあったマフィアの金を渡したとたん、バーニーが青年を刺し、相打ちで青年もバーニーを刺して殺します。深手は負ったけれど命ながらえた青年は、金はバーニーの死体のそばに放置したまま、車を運転して・・・おそらくは彼女に会うために・・・
というので「完」。
青年「ドライヴ」役のライアン・ゴズリングと、彼が惹かれる人妻で後半には未亡人になチャーミングな女性を演じるキャリー・マリガンが、すごく良いです。ライアン・ゴズリングは、ジェイムズ・ディーン的な哀愁を帯びたマスク。女子供には優しく、無口で、シャイそうで、決して出しゃばらず、押しが強くもみえないけれど、どんな危機にも冷静で、暴力をふるうときには冷徹で強烈で、ふだんの穏やかな雰囲気との落差がものすごく大きい。この哀愁漂うかのような青年に一目惚れしない女性はいないかも。
そしてその相手役のキャリー・マリガンがこれまた当初の子供との穏やかな日々に入ってきた青年に見せる好意的な笑顔のチャーミングなこと!こんな女性に出会ったら、一目惚れしない男性はいないでしょう(笑)。自分の青年への愛情を抑えるかのように、控えめな笑顔がたまらない。
blog 2018年5月27日