グロリア (ジョン・カサヴェテス監督 1980)
これは文句なく面白い、お勧め映画といってもいい作品です。脚本が面白いんでしょうが、それも監督が書いたようです。
マフィアの組織を裏切ったために殺される寸前の一家から6歳の男の子を託された同じ団地の階に住む隣人グロリア、実はマフィアのボスの丈夫だった女が、一家がマフィアに爆弾で斬殺されたあと、目撃者としての子供と、マフィアの秘密が書かれた手帖を探すマフィアの追手から逃れるために、隠れ家を転々とし、子供嫌いだったグロリアとグロリアを嫌っていた少年が次第に心を通わせ、逃避行をつづける様子を描いたハードボイルド・サスペンス&アクションの物語。
冒頭から緊迫感に満ち、追う者の攻撃と子連れというハンディを背負いながら追われる者の逃避行あるいは反撃等々が非常に面白い。最後は逃げる余地もないまで追い詰められた彼女が覚悟を決めて、手帖を持ってマフィアのボスに会いに出かけ、もし3時間(半)待って戻らなければ、かつて逃亡先と語っていたピッツバークに行くように言い残してマフィアのところへ出掛けて行き、ボスとの話し合いは決裂、殺すなら殺したらいい、私は帰る、と席を立ってエレベーターへ。すぐにマフィアの子分たちが銃を持って追い、エレベーターの天井めがけて上から銃弾を何発もぶち込んで・・・というところでカット、カメラはピッツバークでタクシーで墓地へ向かう少年に向けられます。
マフィアに殺された両親と姉の弔いについて、グロリアは少年を無関係な墓地へ連れて行って、霊魂はどこにでもあつまるから、どの墓に祈ってもいいのだと云い、少年は自分が気に入った墓の前で両親と姉の霊に祈るシーンがその前にあったのですが、それと同じように、少年はピッツバーグの墓地へ来て、無関係な墓のひとつの前で、殺されたであろうグロリアの霊に語り掛けます。少年が待っていろと言って置いたタクシーが去っていくと、そこへ別の車が滑り込んできて、降り立ったのは老婆の白い鬘をつけたグロリアでした。・・・とラストがハッピーエンドになっているのも、この種の映画としては当然だけれど、嬉しい。
グロリアがマフィアの元丈夫で、男勝りの根性を持った姉御肌の女性であるという設定が、この作品を面白くしています。彼女は単に逃げるだけでなく、積極的に追手と戦い、銃をぶっ放して、相手を撃ち殺しもします。少年に母性愛でべたべた接するわけでも、憐れむわけでもなく、もともと子供嫌いの彼女だったのに、殺され際にゆだねられて一旦引き受けた以上は守り抜く、という芯の強さがこの理不尽な逃避行を促しています。そのあたりの彼女の少年に対する感情が名優ジーナ・ローランズによってみごとに演じられています。
Blog 2018-7-27