舟を編む(石井裕也監督)2013
比較的新しい作品で、三浦しをんの原作から評判になった作品ではなかったかと思います。
辞書編纂の話で、よくこういう地味な世界から、一般の人にも面白いと思えるような、あんな多様なエピソードを拾ってこれたものだな、とまず(原作にか映画にかわからないけど)感心しました。
辞書づくりを指導してきた中心人物の松本教授(加藤剛)は、たしかにそういう学者らしいキャラだけれど、その片腕だった荒木(小林薫)の跡を継いで辞書編集部へ配属された主人公馬締光也(松田龍平)は常人離れした対人関係不適応症みたいな青年で、原作でもこんなふうに誇張されたキャラなんでしょうけれど、マンガが原作?と思ったほどでした。いや「三浦しをん」って作家を知らない(スミマセン)ので、ひょっとしたらマンガ家かな・・^^;
ここまでマンガ的にする必要があるの?と思うけれど、そういえば同じ監督の「川の底からこんにちは」でも、そういうところがありましたね。こういうマンガ的に誇張されたキャラを楽しむのがいまふうなのかもしれません。主人公の名やその彼女の名前もマンガ的だし、馬締くんが書くラブレターも毛筆で達筆らしいし・・・すべてはマンガベースなんですね。いまは小説も映画もマンガが原作か、そうでなくてもマンガベースの作品世界が描けないと売れないのかもしれません。
馬締(マジメ)くんと対照的なキャラに設定された営業向きの西岡にオダギリジョー、彼らの先輩の辞書編集部員で馬締くんに「大渡海」編纂作業を委ねて去る荒木に小林薫など芸達者な支柱を立て、そのきわめつけは、馬締くんがひとめぼれする下宿のおばさんの姪・林香具矢(宮崎あおい)で、彼女はほんとうに素晴らしかった。その「ふつう」の女の子の卓抜な演技が、確実に馬締くんの誇張された演技を対照的に引き立たせて、その組み合わせを面白いものにしていました。たしかにどちらかが中途半端だとあの面白さはなかったかもしれませんね。
マンガ的な誇張された世界ではありましたが、辞書編纂という仕事の世界がどういうものか、一冊の辞書をつくるのにどれだけの苦労があるものなのか、そういうのを通して、なにか目的を共有して一緒に一歩一歩進んでいくみたいな感覚、それこそ松本先生言うように、大海に乗り出す一層の舟に乗り合わせた運命共同体みたいな人間のいとなみの感動的な姿やある種のせつなさをちゃんと伝えてくれるような映画でした。
Blog2018-12-10