3.宇宙実験 新材料試験

人類の福祉に寄与する宇宙実験 新材料実験

2002年3月25日、酒泉衛星発射基地で発射された神舟三号宇宙船に一台の多サンプル宇宙空間結晶成長炉を乗せた。

宇宙船の帰還モジュールが4月1日に地上に帰還した時、宇宙空間結晶成長炉は既に宇宙船の軌道で約90時間の運転を完了し、結晶炉が軌道上を運行する時の大量なパラメータを

地上に転送した。

4月5日朝、結晶炉の研究開発と結晶炉の材料加工実験に参画した科学者とエンジニアらはやっと期待した宇宙から帰還した結晶炉と宇宙加工の実験サンプルを見た。

どうして宇宙で材料の加工実験を行うのか。これは宇宙と地上との環境が異なるということから説明する必要がある。

地上では、あらゆる物体は地球の引力を受けている。引力で流体の中に浮力対流を形成する。

例えば、加熱された流体の密度が小さくなり、上向きに運動し始め、まだ加熱されていない流体は上昇流体の元の位置に流れ、対流を形成する。

異なる深度の流体が受ける圧力も異なる:深い所の流体の圧力が大きく、浅い所の流体の圧力が小さい。これは流体の静圧力と言われ、これも地球の引力による現象である。

地球の引力で、また流体の中の重力沈降も生じる。

例えば

河川の中の泥砂が川底に堆積することで、流体の中の比重が異なる成分がだんだん分けられ、比重の大きい成分が容器の底に堆積し、比重の小さい成分が流体の表層に浮き上がる。

上述のように、重力による流体中の現象は地上での材料開発加工に影響を及ぼす。

材料を開発、加工する過程では一般に先ず材料を溶かす。溶された材料く溶体と称する〉は流体であるので、温度分布の不均等などの因子によって浮力対流が生じる。

材料の中の比重が異なる成分は材料凝固の過程で分離し、これによって材料の成分の分布が不均等になるから、地上で材料を開発、加工する場合、必ず上述の重力に影響される

ことになる。

そして、宇宙空間の微小重力条件で材料を開発、加工する過程はどう異なるのか。人類は宇宙空間に入った時代から、ずっとこの間題に注目している。

異なるタイプの宇宙船で沢山の実験を行って、できるだけ早く宇宙で特殊材料の開発と加工「工場」を造り、また工場の運営も商業化されるようになり、大きな利潤を生み出す

ことを目的としているが、宇宙空間材料実験の結果で、早期に宇宙空間で材料を開発、加工することはそれほど簡単ではない。

先ず宇宙空間の微小重力条件下の材料開発と加工の法則について充分に理解し、信頼性の高い実験室のハードウェアを設計・開発してから、初めて宇宙で材料の開発、加工を

行えるのである。

宇宙空間の微小重力条件では、浮力対流の問題がなくなるが、表面張力による対流等の他の現象は依然存在しているので、純粋な拡散過程ではない

;宇宙船上の微小重力はまだ材料の開発、加工過程に影響を与える。

宇宙空間の微小重力条件下で材料を開発、加工する法則を把捉することは、宇宙空間で地上の材料より品質がもっと良い材料を開発、加工できるばかりでなく、

地上の材料開発、加工の参考と指標になり、地上の材料開発と加工技術を改良できる。これは非常に重要なことである。

宇宙空間の微小重力の条件で凝固した

異なる直径の金属ガラス小球の写真

宇宙空間で凝固した直径が3.04ミリの

金属ガラス小球の走査型電子瀬徹鏡写真

地上シミュレーション条件で凝固した

金属ガラス小球サンプルの対比写真

地上で凝固した金属ガラス小球対応

サンプルの走査型電子顕微鏡写真

異なるタイプの異なる開発、加工技術や異なるタイプの設備が必要になる。 ただし、沢山の材料開発と加工設備を宇宙に送る事は現実的では無い。

(1kgの近地球宇宙空間軌道に送るコストは約10万元以上になる)

我が国の材料開発のニーズと地上材料開発の経験に依って、我々はまず開発加工する三種類の材料を準備した。

すなわち半導体オプトエレクトロニクス材料、金属合金および酸素化合物結晶である。

此れ等の材料の開発、加工の要求に従い、我々は上に書いた多種の材料の開発、加工に適する多サンプル宇宙空間結晶成長炉を設計した。

当結晶成長炉は内部炉体とコントロール器の二部分から構成され、実験サンプルを炉体の材料室に入れて、転動機構で炉の加熱区に送り、また取り出す。

加熱区の温度とサンプルの移動スピードは全てコントロール機で各サンプル毎にコントロールするので、一つの炉で個別の技術で異なるタイプの材料を処理出来る。

また、炉の発熱部分は出来るだけサンプルにちか付けて、有効な隔熱材料および保熱処理を取ったので、高い温度に達しても消耗エネルギー量が少ない。

炉を宇宙空間に打ち上げる前に数回の地上実験を行い、各種サンプルの技術条件を把握し、また炉の部品構造を厳しく試験改良して、この炉型サンプル(多機能)、低消費率、

小体積、軽重量および高安全度の特徴を備える様になった。 これで我が国の宇宙材料科学研究分野に有効なハードウエア資源を提供した。

炉が宇宙空間で作動する時に、宇宙船から炉温、転動部品の運行パラメーター等の相関データーを送信して、科学者やエンジニアは送られたデーターで炉の作業状態を判断出来る。

神船三号宇宙船が運行中に炉の相関データーは1292組を送り、これにはサンプルが宇宙船の炉で生成する相関パラメータが含まれている。

此れ等のデーターは神船三号が軌道上で運行する期間に、炉が完全に事前にコントロール機に入力したプログラムで動いていた事を示した。

科学者とエンジニアらは宇宙から帰った炉とコントロール器を見てとても喜んだ、予定のプログラムで炉を開き、サンプルを取り出して観察測定をした。

宇宙環境の試練(振動、衝撃、冷熱変化等)を耐えてすえてのサンプルが高温と溶解の過程を経験した事は材料の宇宙空間での開発と加工を実現したと云える。

宇宙に旅した経験のある炉と宇宙空間運行のプログラムでもう一度地上で同じサンプルに対して実験を行い、同じ条件で地上の対比サンプルを得た。

科学者達はこの二種のサンプルに付いて対比分析作業を行い、外観形態に対する計測と分析を始め、サンプルを解体して雑質成分を含めて成分分布の分析、サンプル構造と微構造に

対する分析、性質分析、力学的、熱学的、電気工学と電磁気工学的性質、工学的性質等、宇宙と地上での差異とその原因の解析もふくんいる。

此れ等の分析を元に微小重力下での材料の開発と加工過程の法則を見いだす事が出来る。

例えば、宇宙空間である金属のガラス小球を精錬する事を例に取る。

夫々の直径が3.04mm、2.34mm、1.57mm、1.02mmの小球を得た。 此れ等の表面は明るく滑らかで地上で精錬した小球の表面状態と完全に異なっていた。

此れ等の小球が宇宙での溶解と凝固を経験したのは明らかで、同じ条件の地上でのシュミレ−ションサンプルはこれらとは異なり表面形状は不規則な楕円球状になった。

二組の小球の外観写真から宇宙サンプルと地上サンプルの差異がはっきりと見える。

宇宙空間の微小重力条件下では、小球が凝固した時、その表面の張力によってより規則的な球を形成したが、地上では、その表面の張力と重力の共同作用を受け、重力で小球が変形

して、規則的な球形にならなかった。

また宇宙空間サンプルと地上サンプルに対してⅩ線構造解析と走査型電子辟微鏡観察を行った。

宇宙空間で凝固した金属ガラス小球のサンプルのⅩ線解析画像で当サンプルが主に非晶相より構成されることが分かった。

走査型電子顕微鏡で観察した時、構造間の区別を発見できなかったことは均等の非晶単相であることを説明できる。

地上サンプルのⅩ線画像で多くの結晶相を観察でき、相応に走査型電子顕微鏡の写真でも顕著な対比差が発見されたことはサンプルが結晶化相より構成されていることを

説明している。

この結果で、

サンプルの地上凝固条件と比べ、宇宙空間の微小重力条件で、サンプルが凝固する時にもっと大きな過冷却を受けることは非晶相の形成に有利になることが明らかとなった。

神舟三号史の材料科学実験は我が国の宇宙空間材料科学研究の方面で新しい成果となり、多機能の宇宙空間材料科学実験ハードウェアをもって、軌道上の正常作動を行った

だけでなく、また初めて宇宙空間で非晶合金等の宇宙空間凝固過程に対する研究を行い、多くの価値のある宇宙空間材料科学の実験データを獲得した。

これは我が国の宇宙空間材料科学の今後の発展に極めて重要な意義をもっている。

宇宙液滴の遷移

有人宇宙飛行プログラム応用システムの有効な課題のひとつとして、我が国の神舟四号宇宙船の帰還モジュールが軌道上で飛行する期間で

液滴の熱毛細管運動の宇宙空間微小重力実験を行った。安定で、長時間の微小重力の環境で、異なる温度段階条件で液滴の熱毛細管運動現象およびその特徴について研究した。

地球上で正常な重力環境での流体問題に触れる場合、浮力効果が重要な役目をもつ。浮力によって、水中の油滴が水面に浮き上がる。

微小重力環境で、流体内の静庄、流体の沈降、分離現象が基本的になくなり、他の現象に比べ、液滴の熱毛細管運動現象が宇宙微小重力環境で現れてきた。

もしある液体に温度階段を施すと、液体の中の液滴は温度が低い区域から温度が高い区域に移動し、また移動の軌跡も残される。

液滴の宇宙での「遷移」現象で、微小重力環境での液滴の遷移速度、軌跡、尾跡についての状況を研究できる。

液滴内部流動場実験の写真

微小重力下の液滴、

熱毛細管運動の写真

神舟宇宙船の実験設備に据え付けたビデオカメラはフツ素水溶液の液涌のシリコンオイルの中での運動の全過程を録画し、また実験進行過程中の画像を地上に送った。

実験では、我が国が独自で研究開発した宇宙空間科学設備が全て正常に稼働し、実験も事前の設計通りに実行され、大成功を収めた。

今回の宇宙空間実験で、微小重力流体実験があるキー実験技術で重要な進歩をもたらし、また今後の宇宙空間流体物理実験のために貴重な経験となった。

微小重力流体物理学の分野で、価値のある学術研究成果を収めた今回の宇宙空間科学実験の成功は、我が国の微小重力流体物理空間科学実験の研究能力が既に国際先進レベルに

達したことを示している。

液滴の熱毛細管運動の駆動カは液滴の自由表面の温度分布による液摘または気泡界面の張力から由来するのである。

不均等な界面張力階段によって熱毛細管運動を起こすことは、液滴、動力学の重要な課題である。液滴の熱毛細管運動の説明囲および液涌内部の実験写真を参照してください。

液滴の熱毛細管運動現象は二つの状況で現れる

:一つは重力場で、もし液滴と母液の液体とが混溶しておらず、また密度が接近している場合、重力作用に駆動される流体運動が弱くなり、熱毛細現象が現われる

;もう一つは微小重力環境で、浮力の影響が既に無くなり、熱毛細現象が主導的作用になるので、液滴の遷移を形成できる。

船載流体実験設備は液滴遷移実験装置、記録機、電子コントロール装置と二次電源の四つの部分より構成される。

実験設備は全て宇宙船の帰還モジュールに搭載される。実験装置の液滴注入および液路システムは双筒技術および無増庄液体貯蔵補償等の特許技術を採用した。

実験装置の中に光学試験システムを装備して、液滴の運動軌跡とセル内の温度場の変化画像を観測できる。

温度場の変化と液滴周囲の状況は簡単で安定した干渉測量システムで観測され、二台のテープ記録機はそれぞれリアルタイムに液滴の運動軌跡と干渉画像を記録する。

プログラムコントロール、リモートコントロールおよびデータ注入の多種の手段で実験過程を干渉でき、また一定のリモート科学の機能も備えている。

液滴の宇宙空間微小重力環境での熱毛細管運動時の画像は図の通りである。図は微小重力環境下の液滴熱毛細管運動の状況を良く反映している。

液滴の密度は母液密度の二倍もあるので、地上で母液に液滴を注入すればすぐ底に沈むが、宇宙空間の微小重力環境では、液滴が母液の中に浮け、また液滴がただ界面張力に駆動

され、温度階段の方向に沿って運動する。

液滴の熱毛細管運動実験は重要な学術価値がある以外に、応用上の重要な背景もある。

微小重力環境での液摘または気泡熱毛細管運動動力学の課題は理論面の重要性もあり、また極めて強い応用面もある。

微小重力環境下の材料加工、結晶混和、宇宙空間溶接および電気泳動過程に液摘または気泡の遷移問題が現れる。微小重力条件下の熱毛細現象による液滴の遷移過程と理論は

重要な材料加工や他の応用面をもっているので、液涌の熱毛細管運動研究は世界的に重視されている。