14.ステイーブ.ジョブスから学んだ事

無題のドキュメント

S・ジョブズ氏から学んだこと--G・カワサキ氏が得た12の教訓 Guy Kawasaki氏。

多くの人が、Steve Jobs氏から学べることについて説明してきた。しかし、それらの人々のうち、実際にAppleに在籍し、同氏とともに働くことがどういうことなのか直接に経験した人はほとんどいない。筆者は1つの教訓も失われたり、忘れ去られたりしてほしくはない。そこで、筆者がJobs氏から学んだ教訓から、最も重要な12個を以下に紹介する。

1. 専門家は何も分かっていない

専門家、すなわちジャーナリストやアナリスト、コンサルタント、銀行家、権威者たちは自分では何も「なし得ない」ので、「アドバイス」をする。専門家は製品の欠点を指摘することはできるが、偉大な製品を作り出すことはできない。専門家は何かを売る方法について語ることはできても、自分自身でそれを売ることはできない。専門家は素晴らしいチームの作り方を説明することはできるが、自分たちが管理できているのは秘書1人だけだ。例えば、1980年代中ごろ、専門家は、「Macintosh」の2つの最大の欠点はデイジーホイールプリンタのドライバと「Lotus 1-2-3」がないことだと指摘した。別の専門家からは、Compaqを買収しろという貴重なアドバイスをいただいた。専門家の意見には耳を傾けよう。だが、それを常に聞き入れてはいけない。

2. 顧客は自分のニーズを伝えることができない

「Appleの市場調査」というのは矛盾した表現だ。Appleのフォーカスグループは、Steveの左脳に話しかける右脳だった。顧客に何を求めているか尋ねても、「よりよく、より速く、より安いもの」と答えるだろう。それは同じものを改良しただけであり、革命的な変化ではない。顧客は、自分たちがすでに使っているものの観点からしか望むことを説明できない。Macintoshが発売された当時、人々が欲したのはよりよく、より速く、より安い「MS-DOS」マシンだった。テクノロジ分野の新興企業にとって、市場の掘り出し方として最も大きな可能性があるのは、自分が使いたいと思うような製品を作ることだ。SteveとWozはまさにそれをやった。

3. 次のカーブまで飛ぶ

同じものの改良を超えたところに、大きな勝利がある。最高のデイジーホイールプリンタ企業は、新しいフォントをより多くのサイズで発表していた。Appleはその次のカーブであるレーザー印刷を導入した。採氷者と製氷工場、冷蔵庫メーカーを考えてみてほしい。これらはIce 1.0、Ice 2.0、Ice 3.0だ。あなたなら、冬場の凍った池に今でも採氷しに行くだろうか。

4. 大きな試練が最高の仕事を生む

筆者は自分や自分の仕事について、Steveにけなされることをおそれていた。公の場で、それをされることにおびえていた。この恐怖心は大きな試練だった。IBMやその後のMicrosoftとの競争は大きな試練だった。世界を変えることは大きな試練だった。筆者、そして先輩や後輩のApple従業員たちは最高の仕事をした。なぜなら、そうした大きな試練を乗り越えるためには、最高の仕事をするしかなかったからだ。

5. デザインは重要

Steveのデザインに関する要求は、関係者の気が変になるほどのものだった。黒の影の部分が十分に黒くないなどと言っていた。普通の人なら、黒は黒、ごみ箱はごみ箱と考える。Steveは完璧主義者であり、そして正しかった。一部の人々はデザインのことを気にかけ、多くの人は少なくともそのデザインを感じ取る。すべての人ではなくても、重要な人たちはそうだ。

6. 大きなグラフィックと大きなフォントを選択すれば間違いない

Steveのスライドを見てほしい。フォントは60ポイントだ。通常、1つの大きなスクリーンショットや図があるだけだ。テクノロジ分野におけるほかの講演者(Steveの講演を目にしたことのある人も含めて)のスライドを見てほしい。フォントは8ポイントで、図はない。非常に多くの人が、Steveは製品発表にかけては世界一だったと言う。Steveのスタイルを模倣する人があまりいないことを不思議に思わないだろうか。

7. 心変わりは知性の表れ

Appleが最初に「iPhone」を出荷したとき、アプリなどというものは存在しなかった。Steveは、アプリについて、自分の携帯電話にどのような影響を及ぼすか分からない悪いものだと断言した。「Safari」ウェブアプリが推奨されていたが、6ヶ月が過ぎる頃にはSteveが決断して、あるいは誰かに説得されて、アプリに注力すべきだとなった、当然のように。まったく!Appleは短い間に、Safariウェブアプリから「それのためのアプリがある」というところまで大きな進展を遂げた。

8. 「価値」と「価格」は違う

価格を基にすべてを決めている人には、苦痛だろう。価格だけを基準に競争しているのだとしたら、さらに苦痛かもしれない。価格だけが重要なのではない。少なくとも一部の人にとって、重要なのは価値だ。そして価値を計るときには、トレーニングやサポート、そして作られたものの中で最高のツールを使うことの本質的な喜びも考慮される。価格の安さを理由にApple製品を買う人など誰もいないと言っても間違いではないだろう。

9. 一流のプレーヤーは超一流のプレーヤーを雇う

実際には、一流のプレーヤーは一流のプレーヤー、すなわち自分と同じくらい優秀な人を雇う、というのがSteveの信念だった。筆者はそれを少し修正した。一流のプレーヤーは自分よりもさらに優れた人を雇う、というのが筆者の理論だ。しかし、二流のプレーヤーは優越感に浸れるように三流のプレーヤーを雇い、三流のプレーヤーは四流のプレーヤーを雇うのは明白だ。二流のプレーヤーを雇い始めたら、その組織内では、Steveが「無能の連鎖」と呼んだ現象が発生すると考えていい。

10. 本物の最高経営責任者(CEO)はデモをする

Steveは膨大な数の人々が見つめる中で、「iPod」や「iPad」、iPhone、「Mac」のデモを年に数回行うことができた。多くのCEOがエンジニアリング担当バイスプレジデントに製品デモを任せているのはなぜだろうか。それは、チームとして取り組んでいる姿を見せるためなのかもしれない。その可能性も否定はできない。しかし、CEOが自社の作っている製品について、自分で説明できるほど理解できていない可能性の方が高い。それは何と哀れなことだろうか。

11.本物のCEOは製品を出荷する

Steveは相当な完璧主義者だったが、製品を出荷することができた。製品はいつでも完璧なわけではなかっただろうが、ほぼ毎回、出荷するのに十分に素晴らしいものだった。ここでの教訓は、Steveはいじくり回すのが目的でいじくり回していたわけではないということだ。Steveには、製品を出荷して、世界規模で既存市場を支配したり、新たな市場を作り出したりするという目標があった。Appleはエンジニアリング中心の企業であり、研究中心の企業ではない。AppleとXeroxのパロアルト研究所(PARC)、あなたならどちらになりたいだろうか。

12. 詰まるところ、マーケティングとはユニークな価値を提供すること

ユニーク+価値=市場がある

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縦2マス、横2マスの表を思い浮かべてほしい。縦軸は自社製品が競合と異なっている度合いを表す。横軸は自社製品の価値を表す。右下のマスなら、価値は高いがユニークではなく、価格面で競争する必要がある。左上のマスなら、ユニークだが価値はない。それは存在しない市場を支配するに等しい。左下のマスなら、ユニークでない上に価値もないという意味なので、間抜けな話だ。そして、右上のマスはユニークで価値もある。ここに属する製品を作れば、利益をあげ、売り上げを伸ばし、歴史を作ることができる。例えば、iPodは大手レコードレーベル6社の音楽を合法的かつ安価で、簡単にダウンロードできる唯一の手段だったため、ユニークで価値があった。

ボーナス:実現のために信じさせる必要があることもある。カーブに飛び乗り、専門家の言うことに挑戦したり無視したりし、大きな試練に立ち向かい、デザインに執着し、ユニークな価値に力を注ぐときには、そうした取り組みが実を結ぶのを見るために、あなたがしていることを信じるよう人々を説得する必要がある。Macintoshが現実のものになるためには、人々がそれを信じることが必要だった。iPodやiPhone、iPadについても同じことが言える。中には信じない人もいるだろうが、それは問題ない。しかし、世界を変える作業は数人の考え方を変えることから始まる。これは、私がSteveから学んだ最高の教訓だ。Steveがどれだけ世界を変えたかを知り、安らかに眠ってくれることを祈る。

Guy Kawasaki氏について

Guy Kawasaki氏は「Enchantment: The Art of Changing Hearts, Minds, and Actions」の著者である。同氏はまた、ウェブ上の人気トピックを集めた「オンラインマガジンラック」であるAlltop.comの共同創設者で、Garage Technology Venturesの創設パートナーでもある。過去には、Appleのチーフエバンジェリストを務めた。