福建の土楼

中華人民共和国福建省山東省に位置する土楼群。

土楼とは土壁で囲まれた直径30m~80mほどの巨大建築物で、円形や方形など幾何学的な形状をしている。外壁は土、内部は木造で構成されており、多くは3階建か4階建で、一族を単位として居住している。土楼の内部構造はどれも同じで、1階は厨房、2階は倉庫、3階、4階が各世帯の部屋となっている。防衛的な機能に優れており、かつては1階、2階部分には窓がなく、内部に井戸や倉庫を有しているため、数ヶ月の籠城が可能であった。

現存する最古の土楼は7~8世紀ごろの建造とされ、明清代に建てられた土楼も数多く残る。1970~80年代まで土楼は建造され続けたが、90年代以降は土壁でできた円楼は見られなくなり、観光をメインとした土楼型のホテル、レストラン、博物館などが目立つようになった。現地政府によれば土楼は福建省永定県だけでも2万戸以上あるという。土楼が広く世間に知られるようになったのは、実はここ30年ほどの間で、改革開放政策が本格化した1980年代まで、一部の華僑を除き、その存在はほとんど知られることがなかった。しかし2008年7月の世界文化遺産に登録に前後して、観光開発が加速し、現地社会に大きな変化がもたらされた。

土楼を建築する際は、風水先生と呼ばれる地理の専門家が、周辺環境や方位、建物内の井戸の配置や門の位置などを決め、土楼の内部構造には八卦思想が反映される。土楼に居住する人々は旧暦(農暦)に基づいて生活しており、毎月1日、15日には土楼の中心部や門前に線香を立て、天公(上帝)へ祈りを捧げる。土楼内部では天公(上帝)、保生大帝(病気治しの神)、観世音菩薩、土地公(土地の神)などが祀られている。とりわけ春節(旧正月)の時期には、神々が村を練り歩き爆竹が打ち鳴らされ賑々しく祭祀活動が行われる。

参考文献

標高400m~800mの山間に円形や方形の土楼がならぶ

円形土楼、外側に広がる建屋は家畜小屋と便所

土楼の内観

観光開発が進んだ土楼

土楼内部で祭祀を行う道士先生

土楼内部におさめられている観世音菩薩

一階で夕食の準備をする住民

方形土楼