スカン・グアイ

カナダ最西部のブリティッシュ・コロンビア州、クイーン・シャーロット諸島の最南端にある島で、アンソニー島とも呼ばれる。スカン・グアイという名は、カナダの先住民であるハイダ族の言葉(ハイダ語)で赤い鱈を意味する。世界遺産もハイダ族が残した集落跡が中心となっている。

ハイダ族の集落があった場所は、最後の村長の名前「ナンスディンス」で知られている。主に漁労を生業とする先住民の一族であるハイダ族(ハイダ=「人々」)は5,000年前にすでにクイーン・シャーロット諸島で豊かな生活を営んでいた。かつては1万人近い人口があったが、19世紀以来、白人との接触に起因する伝染病などにより人口が激減、1983年には1,400人を残すのみになった。スカン・グアイにある村には1830年の時点で300人のハイダ族が住んでいたようだが、1862年の天然痘の流行によってそのほとんどがいなくなり、数人の生存者は北の島に移住した。1981年、スカン・グアイはハイダ族の文化遺産としてその貴重さが認められ、世界遺産として登録された。ナンスディンス跡には10以上の杉造りのログハウスと32の巨大なトーテムポールが残っている。

スカン・グアイのトーテムポールには、葬儀のためのポールや何かを記念するためのポールがある。ポールに彫刻されている頂部の飾り(クレスト)によって、埋葬されている人の系統や何を記念したポールであるかが分かるようになっている。結婚や葬式、また神話や一族の系譜を記念するためにポトラッチ(大盤振舞の宴会)が開催され、その際にトーテムポールが彫刻されることが多かったようである。

ハイダ族はワシとカラスの2部族に分かれ、各部族が複数の系統に分裂していた。各系統が独特のクレスト(70以上存在する)を持ち、クマ、オオカミ、クジラ、サーモン、ハクトウワシ、カエルといった象徴は今日でもハイダ族の社会で重要な意味をもつ。

ハイダ族の創造神話にはさまざまなバリエーションがあるが、カラスが中心となっているものが多い。たとえば、カラスが貝殻に隠れていた男を言葉たくみに誘い出しこの世を作ったという神話、また、ずる賢く変装したカラスが、太陽、月、星を空の家から盗み出して人々に与えたといった神話がある。 カナダの先住民(アメリカ国内の先住民は「ネイティブ・アメリカン」と呼ばれるが、カナダの先住民は「ファースト・ネーション」と呼ばれる)の宗教文化を知るための貴重な遺産である。

参考文献リスト