北京と瀋陽の明・清王朝皇宮

北京中心部の故宮(紫禁城)および瀋陽の瀋陽故宮が含まれる世界遺産。

紫禁城は明・清朝において宮殿として用いられ、1924年に皇族が紫禁城から退去させられて以後は、故宮博物館として扱われるようになった。約72万平方mの敷地を有する世界最大規模の木造建築群で、内部は太和殿 、中和殿 、保和殿が存在し、主に政治的儀礼を執り行う区画であった外朝と、乾清門を抜けた先にある、乾清宮、交泰殿、坤寧宮が存在し皇族が居住していた内廷に分かれる。

紫禁城には随所に中国思想が反映されている。その名称は天の中央にある北極星を指す「紫微」から取られている。またほとんどの建物に用いられている黄色は、五行で土および中央を表し、同じく紫禁城が国の中心にあることが示されている。随所の柱や城壁に用いられている赤色は火および南方を表し、さらには繁栄や正義を意味している。また皇帝の寝室は乾清宮に、皇妃の寝室は坤寧宮にあってそれぞれ天と地を表しており、それらが交わる場所が中間にある交泰殿である。このように陰陽五行思想に沿った建築が行われている。

もう1つの世界遺産である瀋陽故宮は清の前身である後金の都であり、清が成立して北京に遷都して以後は離宮として用いられていた。瀋陽故宮は紫禁城に比べれば小規模だが、それでも70以上の建物を含んでいる。

特徴的なのは、庭に立てられた「索倫竿」と呼ばれる台座に乗った3メートルほどの木の棒である。これは清朝を興した愛新覚羅の一族に伝わる伝説に由来している。愛新覚羅の一族は他部族の反乱に遭い、一族が皆殺しにされたが、ある男の子だけはカラスの大群が追っ手の注意をそらし、逃げ延びることができた。この伝説のため清王朝においてカラスは神鳥とされ、索倫竿においてカラスに供え物を捧げる儀礼が行われてきた。


参考文献

北京故宮:保和殿

北京故宮:乾清門

北京故宮:城壁に囲まれた通路