パンノンハルマのベネディクト会修道院とその自然環境

ハンガリー北西部のパンノンハルマにあるベネディクト会修道院は、996年に創設されたハンガリー最古の修道院で、ハンガリーのキリスト教化の拠点となった。修道院の図書館は、最古のマジャール語文献(1055年)や聖書の写本、インキュナブラ(初期の印刷出版物)等の貴重書をはじめとする35万冊を収蔵。ヨーロッパでも指折りの水準を誇る。

修道院は12世紀に一度火災によって焼失し、13世紀に再建された後も増改築が繰り返され、1541年には大修道院に昇格した。16~17世紀、オスマン・トルコによる侵攻の際、修道院は要塞として使用され、一時はトルコ軍に占拠され、荒れ果てたが、トルコ軍が退却した後、修道士たちの手で再建が進められた。このような経緯から、修道院では、ロマネスク様式の聖堂の扉、ゴシック様式の回廊、新古典様式の図書館など、各時代の特徴的な建築様式が混在する様子を見ることができる。

18世紀後半には、ハプスブルク帝国によりベネディクト派の活動が制限されたため、ギムナジウム(中等教育学校)を建設し、教育活動に重きを置くようになった。これはハンガリーで最初のギムナジウムであり、現在も中高生がこの学校で寮生活を送っている。

修道院の東側には森が広がっており、周辺の豊かな自然の景観も含めて世界遺産に登録されている。

参考文献リスト