フランスのパリから東へ130キロ離れた、「王たちの都市」と呼ばれるランス市はフランス国王の歴史の中で重要な役割を果たした土地である。
まず、ランスの大聖堂として知られているのがこの地にあるノートル・ダム大聖堂である。パリにもノートル・ダム大聖堂があるが、その名は「私たちの(Notre) 貴婦人(Dame)」、つまり聖母マリアを意味している。
この聖堂では、496年にフランク王国の国王クロヴィスがカトリックに改宗するための洗礼を受けた。洗礼を執り行ったのは司教のレミである。(ちなみに、併せて世界遺産に登録されているサン=レミ旧大修道院は、この聖レミの墓があった場所に12世紀になってから建てたものである。)そして、クロヴィスの洗礼を機に、その後のフランス王たちの戴冠式がこの聖堂で行われるようになった。最後に行われた戴冠式は、ブルボン朝最後の王シャルル10世の戴冠式(1825年)であったとされている。
現在見ることが出来るランスの大聖堂は13世紀のゴシック様式のものであるが、この場所には既に4世紀から聖堂が建っていたと考えられている。1210年の火災によって古い聖堂が焼失したために、現在の形の聖堂へと再建された。フランス革命や第一次世界大戦の際にも大きな被害を受け、現在でも修復作業が続いている。
ト宮殿は、宮殿がT字型していることから、ギリシャアルファベットの文字、τ(タウ)にちなんでその名がつけられた。戴冠式の期間中には、国王の王座になっていた場所である。15世紀以降は大司教の館としても使われていた。