アンコール*

東南アジア、カンボジア北西部にある都市遺跡で、石や煉瓦で建設された大小の寺院や祠堂、貯水池、橋梁などから成る膨大な数の遺跡群である。アンコールは9世紀から15世紀まで、現在のカンボジアの基となったクメール王朝の首都として栄え、遺跡もその当時のものである。

最もよく知られているのが遺跡群の中でも最大のアンコール・ワットである。12世紀前半にヒンドゥー教寺院として建造されたが、後に仏像を祀った形跡も見られる。寺院全体がヒンドゥー教の世界観を象徴しており、また、回廊にはヒンドゥー神話の物語などが浮き彫りで描かれている。一方で、村人は水への信仰を寺院の一部に取り込み、自分達の信仰を反映させたともいわれる。

アンコール・ワットの北約1.5kmに位置するアンコール・トムは、13世紀初頭ジャヤヴァルマン7世によって首都と定められた場所である。王は仏教を篤く信仰したため、仏教的要素の強い建物が多く残る。なかでも、バイヨン寺院には、ヒンドゥー教と仏教の双方の要素が混ざり合ったクメール独特の美術様式を顕著に認めることが出来る。

アンコールの遺跡群に見られる建築様式の多様性は、カンボジアの文化がクメール民俗信仰やヒンドゥー教、そして仏教といった諸要素が分かちがたく絡み合って形成されてきたということを物語るものであろう。

参考文献リスト

アンコール

バイヨン

アンコール

アンコール

アンコール

アンコール