ケレタロのシエラ・ゴルダのフランシスコ修道会伝道施設群

シエラ・ゴルダには、18世紀半ば、最終局面を迎えていたメキシコにおけるキリスト教化の拠点として5つのフランシスコ修道会の伝道所(ミッション)が建設され、後には、カリフォルニア、テキサス、アリゾナでの宣教の基盤としても重要な役割を果たすようになった。アメリカに建設されたフランシスコ会伝道所の多くが、このシエラ・ゴルダの伝道所を模倣している。

山がちなケレタロ州に入植した宣教師らは現地人を服従させ、伝道所を建設して人々を周辺の小屋に住まわせた。それぞれの伝道所は近接して建てられ、組織的に機能していた。宣教師は現地語を習得し、人々に食料を提供し、福音のみならず、生活や振る舞いに関する指導、教化も行ったとされる。

サンティアゴ・デ・ハルパン、ランダ、ティラコの3つの伝道所は、中庭と回廊を有する16世紀のヨーロッパの修道院を連想させる建物であるが、建物の基礎が十字型になっており、複雑な装飾を施した黄土色の漆喰のファサード(正面)や、聖堂内に飾られた石膏像など、17~18世紀のメキシコ・バロック建築の特徴も兼ね備えている。

一方で、タンコヨルとコンカの2つのミッションはより独特の外観で、建物は地元の石材を積み、石膏を塗ったものである。建物のファサードは、つる植物や花、天使や聖母マリア、聖人(もちろん、聖フランシスコが含まれる)の像などで飾られている。宣教師とインディオたちが一致協力して作業にあたった成果として、注目を集めている。

参考文献