ロスキレ大聖堂

 デンマークはプロテスタントの国であるが、プロテスタントに改宗した後もカトリック時代の教会をそのまま用いているものが多く存在する。ロスキレ大聖堂はその代表であり、カトリックの大聖堂として建築されながらも、現在ではプロテスタント教会に所属している。ロスキレは、首都コペンハーゲンの近郊に位置する都市である。

 キリスト教に改宗したハーラル青歯王は10世紀にイェリングからロスキレに首都を移し、この地にも教会を築いた。

 ハーラル青歯王はその教会に埋葬されるが、その後教会は取り壊され、12世紀から13世紀にかけて同地に現在の大聖堂が建築される。

 1413年にはデンマーク・ノルウェー・スウェーデンが連合するカルマル同盟を締結したマルグレーテ1世が死去したが、その遺体はシュラン島中部のソーロー教会からロスキレ大聖堂に移された。以後大聖堂はカルマル同盟の盟主のための教会という意味合いを帯びるようになる。


 1536年にクリスチャン3世がルター派に改宗すると、ロスキレ大聖堂のプロテスタント化が試みられた。大聖堂は改宗に反発したが、司教は投獄され、その財産は国有化された。これにより大聖堂はデンマークの国民教会である福音ルター派の所属となる。以後、大聖堂は礼拝堂や尖塔の増築を繰り返しながら現在に至る。

 ロスキレ大聖堂はデンマークで最も重要な教会建築であり、800年以上の歴史を反映している。建築はゴシック様式とロマネスク様式が複合され、250万個に及ぶ赤レンガの使用はスカンディナヴィアの教会としては最も初期のものである。

 現在では40人ほどの王・女王が眠っており、その多くは豪華に装飾された棺に安置され、訪れた人が目にすることができる。また内部には金メッキの祭壇画、説教壇、オルガンなども配され、いずれも王族にふさわしい豪華なつくりとなっている。


 国王と配偶者はロスキレ大聖堂に埋葬されることが慣例となっているが、女王マルグレーテ2世の夫であるフランス出身のヘンリック殿下は、女王と対等に扱われないなら妻の隣に埋葬されることを拒否すると発言し、王室がこの発言は認知症によるものであるとするなど物議を醸した。ヘンリック殿下は2018年に亡くなったが、遺灰は本人の意思を尊重してロスキレ大聖堂にではなく半分が海に散骨され、残りが王室の敷地内に埋葬された。