アトス山

ギリシャ北部、ハルキディキ半島北東の「アトス」と呼ばれる半島の先端に、アトス山がそびえている。ギリシャ神話によるとアトス半島は巨人アトスがポセイドンに投げた岩であるという。さらに、キリスト教徒はこの半島がイエス・キリストが聖母マリアに贈った「聖処女の庭」であるとする。

また、アトスの名はギリシャ正教を奉じる修道院群から成る自治国家(共和国)としての半島全体を指す場合もある。現在は20の修道院がアトスの立法行政組織を共同で営んでいる。アトスに修道士が住み始めた正確な時期についてはわかっていないが、9世紀初頭から修道共同体が増えていったものとみられている。

アトスは「ヘシュカスム(静寂主義)」と呼ばれる修道思想で知られる。それは、祈りと思想を通じて内面の静寂を獲得し、神の力の発現たるエネルゲイアと一体化することを究極の目標とするものである。こうした静寂主義を最もラディカルに実践しているのは「カルリア」に住む修道士たちである。彼らは、山腹に掘られた穴に住み、雨水や草、修道院から与えられるパンなどの最小限の必需品で生きているといわれる。

現在でもアトスには女性と子供は立ち入ることが出来ない。また、正教徒以外の訪問客もアトスを訪れる際には、ギリシャ外務省の許可が必要になる。

参考文献リスト