14世紀に神聖ローマ帝国の首都として繁栄したプラハは、現在も中央ヨーロッパのキリスト教文化の中心地として知られる。プラハの歴史地区にあるほとんどの建物は文人皇帝として知られている神聖ローマ皇帝、カール4世の時代（14世紀）に建てられたものである。その中で、宗教文化に関する重要な建築物として以下のものがあげられる。

聖ヴィート大聖堂

チェコで最も大きい聖堂であり、プラハ大司教の司教座がある。聖ヴィートとは、プラハとボヘミアの守護聖人であるヴィトゥスのことを指す。ヴィトゥスは、ローマ皇帝によるキリスト教徒迫害の際、拷問を受けながらも信仰を捨てなかったことで知られる聖人である。

聖イジー聖堂

プラハ城内にあるもっとも古い教会。920年に建造が開始された。聖イジー聖堂は聖ゲオルギオスに捧げられている。聖堂内には他にもチェコの殉教者である聖ルドミラの墓もある。現在はコンサートホールやギャラリーとしても使われている。これらの聖堂はそれぞれの聖人たちに対する崇敬と深く結び付いており、カトリック圏での聖人崇敬の重要性をうかがうことができる。

ストラホフ修道院

プレモントレ修道会の修道院。プレモントレ修道会はシトー会に倣って12世紀に創立された。フランス革命によって解散させられ、19世紀には消滅しかけていたが、19世紀半ばから復活。現在約100か所の修道院が世界中に存在している。修道院の中には、創立者（クサンテンのノベルトゥス）の墓がある。

ティーン聖堂

14世紀に建てられた。80メートルにもおよぶ二つの塔の上にさらに4つの尖塔がある構造が特徴的である。その中にはプラハでもっとも古い17世紀のパイプオルガンがある

旧ユダヤ人墓地と旧新シナゴーグ

ヨゼフォフと呼ばれるプラハ市内の同区域は、かつてのゲットー（ユダヤ人居住区）として知られる。12世紀頃からユダヤ人たちが集まり始め、16世紀から18世紀にかけて、ユダヤ人街としてのその規模はヨーロッパ屈指のものとなった。19世紀にはゲットーが解体され一時は荒廃したが、その後の都市計画により様々な様式の建物が建造された。フランツ・カフカの出身地としても知られる。

同地区の旧ユダヤ人墓地は、15世紀から18世紀まで使われていた。墓地の面積が狭かったために、スペースがなくなると墓石を脇へとはずし、土を上に載せ再び墓を掘ったという。そうした積み重ねは12層にものぼっているとみられ、狭い墓地に１万以上の墓石が残っている。

旧新シナゴーグは13世紀に建てられた。古い部分（13世紀）と新しい部分（16世紀）から成るために「旧新」と称される。ヨーロッパでもっとも古いシナゴーグの一つである。旧新シナゴーグは現在も使用されており、ヨゼフォフにおけるユダヤ人たちの歴史を今に伝えている。

プラハ国立美術館

プラハ市内および近郊の複数の館に分かれて展示されているが、ボヘミアと中央ヨーロッパの中世美術を展示している「アネシュカ・チェスカー修道院」、チェコ・キュビズムが展示されている「黒い聖母の館」、アジア美術や世界各地の古代美術が展示されている「キンスキー宮殿」が旧市街にある。

参考文献リスト