首都ヘルシンキから北に約300km、ユバスキュラ近郊に位置する町ペタヤヴェシ(Petäjävesi)に建つプロテスタント・ルター派の木造教会で、1763-65年に建造された。
地域の会衆のために建てられたこの教会は、東スカンジナビアに独特な木造教会の伝統に基づいて建築されており、ゴシック、ルネサンス、バロックの建築様式の影響が見られる。元はすべて松の丸太によって建てられ、教会内部の説教壇、信徒席、シャンデリアなども松材から作られている。1879年に新たな教会が建てられて以後、この教会は使用されなくなったが、その歴史的価値が認識されて以降は修復や保存が行われるようになり、1994年に世界文化遺産に認定された。
フィンランドには少しずつキリスト教が持ち込まれ、中世には南西のトゥルクに教区が設けられていた。その後連合していたスウェーデンにおいて16世紀に宗教改革が始まると、カトリックの教会は国王に接収され、プロテスタントのルター派へと置き換えられていった。
19世紀にロシアから独立した際に、ルター派教会はフィンランド正教会とともに国教としての地位を得た。だが現在では他の北欧諸国と同様に、ルター派教会の国教の地位は徐々に揺らぎつつある。その変化は国家の影響力からの教会の自律という形で進み、ほとんどの面において国家との特別な関係性はなくなっているので、実質的に国教は廃止されていると言われる。
同時に、人々の教会からの離脱も進んでいる。2018年の調査では月に一度以上教会を訪れるフィンランド人はわずか10%であり、教会に所属していると教会税を払わなければならないため、とりわけ若い世代で教会から離れる人が増えている。それでも2021年時点で66.6%がルター派教会に所属しているので、「所属すれども信仰せず」という状態が典型的である。
・Lisbet Christoffersen, Kjell Å Modéer, and Svend Andersen eds. Law & Religion in the 21st Century: Nordic Perspectives, Djøf Publishing, 2010.
・Statistics Finland, "Population and Society" 最終アクセス2022年8月29日
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